第65話 兄達との時間ですが何か?

 ランドマーク家の新しい館の完成に領民からはお祝いの声が寄せられた。


 そして連日、見物客が訪れた。

 ファーザはよほど嬉しかったのか、ランドマークの街が眼下に見下ろせる塔の頂上に見物客を案内しては一緒に眺めたりしていた。


「年末の挨拶でもうすぐスゴエラ侯爵の元に行くんだよね?あんなことしていて大丈夫かな?」


 長男タウロが父ファーザの喜びように呆れていたが、


「その準備は、もう、してるみたいだよ」


 と、ジーロがフォローしていた。


「開発した『乗用馬車一号』の、スゴエラ侯爵家の家紋を入れたカスタムモデルをお土産にするって言ってたよ」


 リューがジーロに頷いてタウロに教える。


「そっか、ならいいけど。それにしても数年前なら考えられなかった事だね」


 タウロは頷くと過去を思い出したのかふと口にした。


「そうだね。以前は手土産を用意するどころか宿屋の宿泊費や交通費の捻出に頭を悩ませてたよね」


 ジーロが父達の苦労を思い出したのか少し湿っぽい雰囲気になった。


「あの頃はリューが森に狩りに出かけて食べれる物を獲りに行ってくれてたよね」


 タウロが、リューに感謝した。


「今もそれはあんまり変わらないけどね」


 リューは照れ隠しに笑うと魔境の森で同じ事してるからと言うのだった。


「ははは!リューは逞しいから。僕達もまた休みの間、リューと一緒に鍛錬しないといけないね」


 タウロがそう言うとジーロとシーマも頷くのだった。




 タウロとジーロは魔境の森の境に集落が出来て、さらには魔境のど真ん中にランドマーク家の畑が出来てる事に度肝を抜かれた。


「……何してるの、これ」


 タウロがジーロ達を代表して指摘したが言うのはそれが精一杯だった。


 リューが経緯や、今後のランドマーク家の収入の柱の一つになる可能性がある事を説明した。


「今年の屋台ではそれを出したのかい?」


「うん!大好評だったよ。だから、これから栽培を本格的にする為に研究も始まってるよ」


 リューはそう言うと、マジック収納からチョコバナーナを出すとタウロ達に配り、食べる様に薦めた。


 タウロ達はこの不可思議な食べ物に最初、臭いを嗅いだり、触ってみたりしていたが一口食べると驚愕した。


「リゴー飴とは違った苦みがある甘さだけどそれがまた美味しいね!」


 ジーロとシーマも感動してすぐに食べきった。


 その横で食べた事があるはずのリーンが羨ましそうにしてるので、リューは苦笑いするとマジック収納から再度チョコバナーナを取り出すと渡すのであった。


「これは、果物のバナーナと一緒にしてるけど、チョコ単体で型に入れて一口サイズにカットして数個一緒に包装して販売する予定だよ。材料のカカオン豆がまだ数に限りがあるし、加工するのに手間がかかるから高級品になると思う。学校に戻る時に三人にはお土産で渡すから学校で配るといいよ」


 と、言うとリューはタウロに彼女用は、また別に渡すからと、付け加えた。


「うん、リュー、ありがとう。エリス嬢もきっと喜ぶよ」


 照れる事なく笑顔でタウロは答えた。


 これは、交際がかなり順調な様だ、成人(十六歳)を迎える時には婚約発表もあるかもしれないと期待するリューであった。



 カミーザと合流すると早速、魔物討伐を始めた。

 タウロ達学校組は、前回の反省から魔物討伐が効率的になっていた。

 学校の間もシミュレーションしていたのかもしれない。

 前回討伐できなかったオーガも魔法攻撃を中心に立ち回り、倒せた。

 これには、リューとリーンも弱点を言ってなかったので驚いたが、なんでも、学校の図書室でオーガについて調べたそうだ。


 カミーザもそれには感心していた。


「強い敵も弱点がわかれば、格上でも倒せる事はあるからな。過去の冒険者の著作物も置いている学校での勉強は為になるじゃろ?もちろん、知ってると事と、経験する事は別じゃ、次からはもっと効率よく倒せるようになるじゃろ」


 カミーザの言う通り、タウロ達は休みの間に知識を経験で裏付けする事でより成長して学校に戻っていくのだった。



 タウロ達が戻っていく数日前の事。


「そういえば、最近、学校やスゴエラの街で『ケンダマ』が流行ってるんだ。あれ、リューが考えたやつだったよね」


 え?今頃?


 驚くリューだったが、嬉しい事なので学校に戻る前にタウロ達にケンダマの技をいくつか伝授した。


 タウロ達は学校に戻った後、リューに教わった技をみんなの前で披露するのだが、その結果、ランドマーク家のケンダマ名人三人衆と変なあだ名を付けられる事になる。

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