第55話 従者が凄いですが何か?
久しぶりにリュー達兄弟は剣の鍛錬を一緒に行う事にした。
そこに、シーマも加わる。
リーンは見学する事にした。
リーンの得手は突きに特化した細剣、弓にメイス、体術なので通常の剣は専門外だからだ。
兄タウロは背も伸びて体格もよくなってきていた。
それにやはり同年代のライバル達がいるから切磋琢磨して以前よりも十分強くなっている。
シーマも同じで学校に通ってる一年の間に心身共にかなり成長した事を実力で示していた。
だが、みんなが驚いたのはリューの成長だった。
ジーロはタウロ達と違って数か月前まで一緒だったからあまり驚かないがそれでも、半年前に比べて随分成長してるのがわかった。
「リュー、何か特別な事でも始めたの?」
ジーロはリューがこの数か月で何をしていたのか気になった。
「?うーん……。リーンとおじいちゃんのところに行って特訓したり、森に行くのに付いて行って魔物を退治してたくらいかな。」
そう、リューはこの数か月、リーンと一緒に祖父のカミーザに付いてみっちり実戦を経験していた。
実戦を積み重ねる事で、余計なものをそぎ落とし、いかに効率よく魔物を倒すかを磨いていたのだ。
経験を積む事で咄嗟の判断にも迷いがなくなり、大抵の事では動じない鋼の精神を得ていた。
もちろん、リューには『ゴクドー』スキルの能力<経験値増大>があるのでそのおかげもあるが、実戦の経験はかなり大きかった。
「これは、僕もすぐに追いつかれそうだな」
タウロが笑って弟の成長を喜んだ。
「リュー坊ちゃん流石っす、自分全く歯が立たないっす!」
シーマもリューを褒め称えた。
「ボクなんて大した事ないよ。リーンの弓矢の技術がまた凄いんだよ?体術と合わせて弓矢による近接戦闘が鮮やかなんだ」
リューが自分の従者であるリーンを誇った。
「弓矢での近接戦闘?」
中・長距離専門の弓矢で近接戦闘とは聞いた事が無い、なのでみんな想像が出来ずにいた。
「敵に接近された時に、体術で相手を捌きながら至近距離で急所をことごとく矢で射抜くんだけど、魔物はみんな即死だよ。あまりの鮮やかさに驚くと思うよ」
見てみたいが、それをされると自分達が即死なので的を射抜いて貰う事にした。
普通の的と、木を間に視界を遮った的、壁の裏側に上に向けた的とリューは変な設定をした。
リーンは、
「曲芸じゃないのよ?」
と言いながら、弓矢を構えると普通の的の中心を射抜き、続けざまに真上を射る様に曲線を描いて壁の裏側の的を射た。
さらに矢を少し曲げて、歪んだ矢を射ると鋭く野球のスライダーの様に曲がりながら木で視界を遮った的を射抜いてみせた。
最後に、また、普通の的を狙うと、最初に射た矢の尾の部分である矢筈に命中させて真っ二つにしながらまた、中心を射抜くのだった。
これらの技術には、タウロ達もびっくりし、拍手すると、
「リーン凄いね!エルフの弓矢の技術に並ぶもの無しって言うけど、まさにそれだよ!」
と絶賛した。
「まぁ、私はリューの従者だから当然だけどね!」
リーンもまんざらでもないのか、へへーん!と上機嫌で鼻を高くしてみせた。
「俺も従者として負けてられないっす!」
シーマがやる気を出して素振りをし始めた。
「シーマも頑張ってるから大丈夫だよ」
タウロがフォローすると、ジーロも頷いた。
「そうだ、夏休みの間、僕達もリューの特訓に付き合って魔物退治に行きたいね」
タウロが提案するとジーロとシーマもそれに大いに賛同した。
「じゃあ、おじいちゃんにお願いしないと。早速行ってみる?今の時間帯ならおじいちゃん森に出かけているはずだよ?」
リューが案内する気満々になった。
「今からだとおじいちゃんみつけるだけで大変そうだけど大丈夫?」
ジーロが素直な疑問を口にした。
「それなら、リーンが『追跡者』のスキル持ちだから、すぐみつけてくれるよ。迷子になる心配もないよ」
リューがリーンの有能さをアピールした。
「さすが、森の民だね」
タウロがエルフの別名を口にした。
「森は私の庭だから」
リーンもその別名に誇りを持っている様だった。
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