第50話 兄妹が天才過ぎるのですが何か?
ジーロの首席合格はランドマーク家を沸かせた。
タウロ、使用人のシーマ、そして、ジーロと三年連続、三人続けて首席合格者を出したのだから喜ばずにはいられない。
この事はスゴエラ侯爵の耳にも入ったらしく合格を祝う祝福の手紙が送られてきた。
同じくタウロが交際しているエリス嬢の親、ベイブリッジ伯爵からもお祝いのメッセージが届いた。
こうなると……ボクのプレッシャーが半端ないんだけど!?
二年後はリューとリーンが王都の学校を受験する予定だ。
ランドマーク家の未来の為にも連勝記録を伸ばす為にも期待されるところだが、ここはリーンに先に来年受験して貰って連勝記録を止めて貰えないだろうか?
「馬鹿な事を言わないで!私はリューと一緒に受験して一緒の学年で勉強するんだから。それが出来れば、順位なんてどうでもいいの」
口は悪いけどランドマーク家への忠誠心は本物なんだなとリーンに感謝するリューだったが、やっぱりプレッシャーはかかる。
残り二年間、しっかり勉強して武術も磨き、魔法も強化していこう。
今は出来る事をやるしかないのだ。
幸い、城壁作りは終わったし道路整備もメインの通りは終えている。
移住者達の為に大工達と共に、まだ家を沢山建てないといけないが、最近ではコツを掴んだので数軒同時に作る事もできるようになってきた。
今のペースなら次の移住者が来る前に一通り建てて落ち着くだろう。
ジーロが学校に行く時期になり、それと同時にリューは10歳になった。
さらにランドマーク領にはまた、移住者の第二陣が押し寄せた。
今回は事前に報告があったが、300人もの人がやって来た。
今回は二度目という事で前回よりもスムーズに家を割り振り、村の方にも農業従事者が沢山訪れた。
コヒン豆作りが人手不足だったので、これは大いに助かる。
職人も、欲しかった陶芸家が複数人含まれていた。
実はリューが地道に作っているトイレの便器を職人達で生産できないかと思っていたのだ。
ランドマークの街では、少しずつ普及して領民達からも絶賛されている。
最初こそ、道端でしたら駄目なの?とか、川にでいいじゃんとか、衛生面でかなり問題な常識が当たり前にあったのだが、スライムによる排泄物処理でほとんど臭くなく汚くないので女性を中心に喜ばれ始めると、男性も病気が減るというリューの説明に、心動かされた。
それからは、各所に配置してあるトイレで用を足すのが、常識になりつつある。
この勢いは大切にしたい。
領外の街や村では未だに排泄物の処理はずさん過ぎて、それが原因で時折病が流行り、亡くなる者も後を絶たない。
この問題が解決すれば、自ずと平均寿命は上がるだろう。
なので、便器作りの為にリューは土魔法で大きな窯を作り、陶芸家に提供した。
もちろん、便器の構造を教え込んで一から作って貰い、焼いて完成させるところまで指導する。
これが出来れば、ランドマーク家の新たな収入源になるはずだ。
道のりは遠いが、職人達と地道にやっていこう。
リューとリーンは毎日忙しかった。
勉強に武芸、街の発展の為に家を建てたり職人達と新たな商品の開発、試行錯誤と奮闘した。
あと、妹のハンナが八歳になったので本格的に勉強と武芸の鍛錬に参加するようになったのだが、こちらがまたランドマーク家の才能の片鱗を見せていた。
最初、女の子という事で、勉強はともかく武芸は人並みで、他の女性らしい嗜みを覚えさせるつもりでいたファーザとセシルだったが、勉強は一を聞けば十を理解し、武芸は兄達の背中を見てきたせいか要領がよく、コツといったものを理解していて八歳とは思えない天才っぷりをみせた。
そう言えば、ハンナのスキルはなんなのか聞いた事が無いリューだったが、母セシルに午前の授業中に聞いてみた。
「これは人に絶対言っちゃ駄目よ?」
セシルが真剣な顔つきで念を押してきた。
何やら知られるとまずいらしい。
「……うん」
リューとリーンは頷くとセシルの言葉を待った。
「『賢者』と『天衣無縫』という特殊スキルなの」
「『賢者』!?」
リーンがこれ以上ないくらいに驚く。
側にいるハンナは自分の話をされているので、耳を傾けていたがスキルの事で驚かれているのが不思議なようだ。
どうやら、人に言わない様口止めされているが、細かい事は説明されていないらしい。
リーンが驚くのも仕方が無い。
『賢者』はとても有名であり、とても希少なスキルだ。
『勇者』や『英雄』、『剣聖』、『聖女』などに匹敵する。
さらに『賢者』に加えて、『天衣無縫』というリューの『ゴクドー』と同じ特殊スキル持ちとなると成長次第で人類最強クラスになるかもしれない。
これは、本当に秘密にしないと、知られた時、世間が混乱すると思ったリューであった。
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