第45話 会談が長いですが何か?
スゴエラ侯爵とランドマーク男爵の会談は思ったより長引いていた。
祖父カミーザもその会談に参加しているのでリューとエルフのリーンは控室で待たされていた。
「長くない?」
状況をよく知らないリーンがもっともな感想を述べた。
「だね。何か揉める事でもあったのかな?」
「私は事情がいまいち飲み込めてないんだけど、カミーザおじさんが命を助けたんだから揉める理由ないわよね?」
「そうなんだけど。お礼の話するだけで何時間もかかるわけないしなぁ」
リューとリーンが何度目かの同じやり取りをしていると控室の扉が開いた。
「リュー、リーン。会談は終わったから帰るぞ」
父ファーザが疲れた顔をして二人を呼んだ。
「「はーい」」
二人はやっと息がつまりそうな豪勢な部屋から解放されたのだった。
宿屋に戻る馬車の中。
「お父さん、なんで長引いていたの?」
「……侯爵が陛下に子爵への昇爵を働きかけると言い出してな」
なるほど、陛下へ直に断りを入れたばかりなので、それは父も困った事だろう。
それに今回の件は国と関係ない事だし、昇爵を望まないと断ったらしいのだが。
「今度はジーロを召し抱えたいと仰ってな。まだ早いし、そもそもジーロは陛下に気に入られて来年は王都の学校に行かせる事になるかもしれん。だから断るのには苦労したよ」
「ジーロお兄ちゃんはタウロお兄ちゃんと同じ学校を望んでたよね?」
「そうなんだが、わからん。陛下や宰相閣下から推薦されるとこれも断るのが難しいんだ」
ファーザはため息をついた。
ジーロが望む進路に行かせたいのが親心だろう。
「侯爵は、ならばうちの孫娘を、とジーロの相手に勧めてきたのだがタウロの事もあるからこれも返答が難しくてな……」
「侯爵もこの段階で拗ねていたな。わはは!」
祖父カミーザが横からファーザの説明に情報を足してきた。
「リューを婿養子にという話も上がったのじゃぞ?」
祖父カミーザがリューをからかう様に言ってきた。
どうやら、命の恩人であるランドマーク家に報いる為にスゴエラ侯爵は親戚縁者になる提案を色々としてきた様だ。
まだ7歳である妹ハンナをスゴエラ侯爵の孫の婚約者にという話も上がったが、これはスゴエラ侯爵の孫にはすでに婚約者がいるので、小さい内から複雑な状況に関わらせたくないと、これにもファーザは強く断ったそうだ。
この世界、裕福であれば複数の妻を迎える事も多々ある事だが、母セシル一筋の父ファーザには抵抗があった。
与力でなくなった以上、領地の割譲も王都に許可を得なければならない為、現実的ではない。
こうなると三男で一番影響が少ないリューが婿養子という話が有力になりそうだが、スゴエラ侯爵もそれはそこまで積極的ではなかった。
タウロは学校での評判を、ジーロの評判は陛下や宰相が高評価している事をカミーザから聞いているが、リューの事は知らない様で凡庸と解釈したのかもしれないとファーザが予測したのだが、
それはそれで傷つくんですけど…!
意外な流れ弾に胸を撃たれるリューであった。
そこへ、リーンが、
「リューは期待されてないの?私、これから大丈夫かしら」
と、追い打ちをかけてきた。
ぐはっ!
内心、吐血する思いだったが、
「だ、大丈夫!ボクもお兄ちゃん達と同様に頑張っているからね」
「でも、才能が無かったら努力も虚しいものよ?」
ぐはっ!
リーン、わざと追い討ちかけてない?
と、思ったリューだったが本人はいたって真面目な様子なので、質が悪い。
「ボクのスキルはゴクドーに器用貧乏、鑑定があって……」
「器用貧乏!?……リューいいのよ、強がらなくて……。ゴクドー?は知らないけど鑑定が別にあるだけでもまだ希望があるのだから。私も出来るだけ見放さないわ」
リーンは明らかにリューに落胆した様子だったから、この子の出来るだけというのも当てにならないと思ったが、後でビックリさせてやろうと企むリューであった。
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