第46話 帰郷ですが何か?
宿屋に戻ると一泊し、ランドマーク男爵一行は翌日には朝一番で帰路についた。
帰り道は順調で途中、村で一泊し、その翌日の昼にはランドマーク家に到着した。
部屋に入ってきたエルフの少女に母セシルは気づくと、
「……リーンちゃん?」
「セシルちゃん?」
「「久しぶりー!」」
きゃー
母セシルの少女な反応には驚いたが、そこに祖父カミーザに呼ばれた祖母ケイも加わり、今度は状況をよく知らないジーロが蚊帳の外になった。
リューはこの数日間で慣れたが、ジーロにはびっくりだろう。
わかるよジーロお兄ちゃん……、ボクも同じだった。
戸惑うジーロの肩を叩くリューであった。
祖父カミーザと祖母ケイ、父ファーザと母セシルの4人は、リーンの故郷の村を救った事があるそうだ。
そして、先の大戦を村の者達と共に戦った経緯がある。
なのでリーンは村の救世主であり戦友である祖父カミーザ達に頭が上がらないのだ。
「一応、ボクの従者になるはずなんだけどね?」
「あの雰囲気だと、リューのお目付け役みたいな感じがするよ?」
ジーロの指摘に、
「でも、リーンはそんなタイプじゃない気が……」
リューはリーンのトラブルメイカー的な性格に難ありと思った。
まぁ、まだ可愛げがあるから許されるけど。
リューの評価はそんな感じであった。
「まぁ、お父さん達みんな喜んでるし、いいんじゃない?ぼくは来年学校でいなくなるから仲良くね」
「王都の学校の方に行くの?」
「あ、お父さんから聞いてたんだ。うーん……、手続きを考えるともう決めなくちゃいけないんだけど、まだ悩んでるよ」
「ジーロお兄ちゃんなら王都でも大丈夫だよ!」
「ありがとう。でも、勉強は普通だからなぁ。タウロお兄ちゃんと同じ学校でいいかもしれないなぁ」
うーん、うちの兄達は自分を過小評価し過ぎてる気がする……。
兄タウロは学校で評価されて自分の立ち位置がわかったのだろうけど、それでも自分はまだまだと謙虚である。
ジーロも多分同じような感じで、周囲が凄すぎるから自分が平凡だと思ってるようだ。
それが兄達の良さでもあるのだが、少しは自信を持って欲しいと思うリューだった。
「で、この子がリューの兄ジーロなのね?」
リーンが蚊帳の外のリューとジーロに話しかけてきた。
「これからは私は従者としてリュー達の下で仕える事になるからよろしくね」
態度は完全に雇う側のそれだが、リーンはこれがお願いらしい。
ジーロは素直に受け止めると、
「リューをよろしくお願いしますね」
と、答えた。
お兄ちゃん、普通の貴族の子ならそこは態度を咎めるところだよ。
心の中でツッコミを入れるところだが、ここはランドマーク家、これが普通で良いよね、とリューは思った。
「そうだ、ボクは夕方までいつものやって来るね」
日課である城壁作りのことだ。
「今日くらいは休めばいいのに」
ジーロがリューを労わるように言った。
「何々?いつものって」
リーンが興味を持った様だ。
そこに母セシルが声をかけた。
「リューの日課をみたらリーンちゃんもびっくりするわよ」
いたずらっ子の様な表情をセシルがする。
「何か変な事でもしてるの?じゃあ、付いて行くわ」
セシルに言われてリーンも興味津々になったようだ。
「じゃあ、付いて来て」
リューは早速リーンを驚かせる機会を得る事になったのであった。
リューは作りかけの城壁に近寄っていく。
この子は何をする気なのだろう?
リーンは疑問だらけだった。
カミーザおじさん達はリューは凄い子だというのだが、スキルが器用貧乏では最初は良くても後の人生苦労だらけだ。
鑑定スキルがあるのでうまく成長できれば食うには困らないだろうが、この歳では今は大した事はできないはずだ。
「じゃあ、やるね」
リューはリーンに声をかけた。
「城壁」とつぶやくと、地響きと共に地面が盛り上がり城壁がせり出してきた。
ちょっとした土の壁なら自分もできる。
精霊使いであり森の神官のスキル持ちだから土魔法は得意だ、だが、この規模は無い!
それも、石一つ一つの作りもしっかりしていて作りは精巧だ。
「ちょっと何これ!?」
リーンは見上げて口を開けたまま驚くのであった。
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