第41話 事の顛末ですが何か?
スゴエラ侯爵暗殺未遂事件では、祖父カミーザからの報告でスゴエラ侯爵自身が事前に知ったことで、二人は協力して裏で調査し事件当日まで動いていた。
その結果、先手を打って防ぐ事ができたのだが、その中で、学校襲撃は暗殺の前に目をそちらに向けさせると同時にランドマーク家の次の当主になるであろうタウロも暗殺できれば一石二鳥という計画だったと思われる。
それほど、隣国は先の大戦で散々自国軍の後方をかく乱したランドマーク家が目障りだったようだ。
当初、スゴエラ侯爵暗殺後、その罪をランドマーク家へ着せる為の準備をしていたようだったが、失敗に終わった事で暗殺に切り替えたらしい。
それを祖父カミーザが直後に知って、駆けつけてくれたという事が、全ての顛末だった。
暗殺計画を知っていたエランザ準男爵は王都に移送されたので、王都到着後の尋問まで明るみにならなかっただろう事を考えると、たまたま自分が隠し部屋をみつけた事は、本当についていたと思うしかなかった。
「リューが隠し部屋をみつけてくれたおかげだ」
祖父カミーザがリューの頭を撫でた。
祖父カミーザはそう言ってくれたが、その後はほぼ祖父カミーザの活躍によるものだった。
自分はほとんど何もしていない、もっと強くならなければいけない。
そう誓うリューだった。
その後、ファーザとジーロが王都から帰ってくるまでは、ほとんど何事も無く過ぎた。
途中、スゴエラ侯爵から謝意の使者が来たが、ファーザが留守だったので、カミーザが代わりに相手をし、ファーザが帰還した後、改めてお礼をしたいとの事だった。
そんな中、ファーザは帰ってくる途中でスゴエラ侯爵暗殺未遂事件と、ランドマーク家襲撃事件を知った。
なので、その知らせを聞いた後は昼夜休まず馬車を走らせた様で、ファーザ一行は予定より数日早く帰ってきた。
城門を過ぎ、祖父カミーザに遭遇したところで馬車を止めた。
「なんじゃ、急いでも結果は変わらんのだから、ゆっくり戻ってくればいいものを。馬がかわいそうじゃろ」
ファーザが血相を変えた顔で馬車を降りてきたのを、息荒く、泡を吹く馬達を労いながら、祖父が笑ってみせた。
「みんな無事なんですか!?」
「うむ、留守をリューとセシルさんがちゃんと守ってくれたわい。ワシも家を離れてたから、ちと焦ったがのう」
「そうですか、無事なら良かった……。おっと、セシル達に早く会わないと」
そう言うファーザの脇から、
「おじいちゃん、ただいま」
と、ジーロが馬車から顔を出した、げっそりしている。
連日、馬車を飛ばしていたから数日間あんまり寝られていなかったのだろう。
「ジーロお帰り。大丈夫か、げっそりしとるぞ。ファーザ、早く帰って休ませてやれ」
ファーザは馬車に乗り込むと今度はゆっくり走らせ屋敷に帰っていくのであった。
ファーザが王都から戻ってから数日後。
ファーザの元に、スゴエラ侯爵から会談要請が来た。
もう、与力ではないから、要請という形の様だ。
父カミーザを同席させて欲しいとの事だが、今回の一件での父の活躍についてだろう。
それは誇らしいのだが、もう少しゆっくりしたかったというのが、本音だった。
今年は片道三週間かかる王都の往復を2回立て続けにやっている。馬車に揺られるのには正直飽きた。
だが、侯爵からの要請だから断れない。
「よし、……行くか。今度は旅行をしたがっていたリューを連れて行こう。……ジーロはさすがに帰りに無茶させ過ぎたからな」
ジーロは文句ひとつ言わず強行軍での帰途に耐えてくれた。
それだけにジーロも当分は馬車は嫌だろう。
「そう言えば、今回の件で王都での出来事が有耶無耶になったな。…帰ってから改めて話すか」
今回、子爵への昇爵を断りに行ったのだが、連れて行ったジーロが国王陛下や宰相閣下らにやけに評価されていた。
多分、知らぬ間に人物『鑑定』をして優秀だと判断したのだろう。
来年から王都の学校に入学できるように推薦してくれる事になった。
本当は、タウロと一緒の学校に入れるつもりだったのだが、昇爵を断った手前、ジーロの事は断りづらかった。
陛下は純粋に子爵昇爵の代わりにその子、ジーロの将来を考え、取り立てるつもりで、まず、王都の学校にと考えたのだろう。
ジーロもそれを察して、何も言わなかった。
それだけにファーザはジーロに申し訳ない気持ちだ。
ジーロはタウロと同じ学校に行くのを楽しみにしていたからだった。
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