第33話 昇爵ですが何か?
リューは9歳になった。
それと同じくして、父ファーザが昇爵の儀の為に王都に行く事になった。
これは異例な話だ。
こういっては何だが、普通、準男爵への昇爵程度なら王都からそれを伝える使者が来てその証書を渡して終わりの簡単な手順らしい。
だが、王都に呼ばれたとなると他にも何かあるのかもしれない。
リューは付いて行きたかったが、今回は寄り親であるスゴエラ辺境伯も同行する片道三週間の長旅なので護衛に領兵数名と隊長のスーゴが付いて行く事になった。
スーゴが行くならボクも良いじゃん!
と、言いたいところだがそういうわけにもいかない。
なのでまたリューとジーロは一緒にお留守番だ。
留守の間、祖父カミーザが二人の武術の稽古をしてくれる事になった。
何げに今まで稽古をしてくれた事がなかったので楽しみだったのだが、父ファーザやスーゴと全然違って、その剣先は変則的でとてもやりづらいものだった。
「ファーザは、冒険者歴より貴族になってからの正規の訓練の方が長いからのう。スーゴも正規の訓練が長い。ワシの独学で身についた剣はやりづらいじゃろ?」
祖父の言う通りカミーザの剣技は変幻自在で型にとらわれないものだった。
だがこの剣技でAランク(超一流)冒険者まで登りつめただけあって、その動きに一切の無駄は無く、合理的でいて、予想だにしない動きを見せるという、リューとジーロが体験した事が無い剣技だった。
祖父との稽古でリューは、自分はこっちの方が向いてるかもしれないと思った。
真似してみるとしっくりくる。
ジーロはファーザから習った剣筋から急に祖父の剣筋に切り替えたりする器用さをみせた。
ジーロは、剣の才能だけなら、兄弟の中でも一番なのかもしれない。
だが、リューも負けてはいない、前年に戦ったオークキングを倒した際(厳密にはほぼ祖父と父だが)経験値が驚くほど入ったようで基本ステータスが跳ね上がっている。
そのおかげでジーロと剣は互角以上に渡り合えるようになっていた。
それに付随してリューは土魔法の熟練度も上がり中位魔法が使えるようになった。
鉄を練成できるようになったのだ。
魔法攻撃力は格段に上がったと言えるだろう。
と、同時にその魔法をランドマークの街の城壁作りに活用した。
鉄の芯を壁の内部に入れる事で強度を上げる前世の壁作りの手法を真似したのだ。
城壁はさほど高いものは作れないが、これだけ丈夫に作れば破られる事はそうはないだろう。
もちろん、城壁作りはスゴエラ辺境伯から許可が下りているので、リューが少しずつ作り始めている。
そんな城壁作りだが、リューがファーザと話し合って最初に決めたのは城門だった。
城門に関してファーザはこだわりがあったらしく、リューと念入りに話し合った。
お濠を作って敵が来たら橋を上げる跳ね橋式にしないかとか、それなら石橋にしてどっしりしたものが良くないかとか意見を言い合ったが、結局、シンプルなものに落ち着く事になった。
なぜならここは、騎士爵程度の街だ。
そこまで立派にしても他所から反感しか買わないだろう、という現実問題にぶち当たったのだ。
だがリューも引けないところはある。
それは城壁で囲う規模だった。
ファーザは最初、リューの負担を考えると小さい範囲でいいと言ってたのだが、これは頑としてリューが譲らなかった。
今後の発展を考えて広めに作りたかったのだ。
意見はぶつかったが、そこに昇爵の話が来た事でリューは勢いに乗り、ついに広めに作る事を説得したのである。
それからは、リューの日課に城壁作りが加わった。
祖父のカミーザに相談しながら地形を活かしたり、整地したりと大変な作業ではあるが少しずつコツコツと進めていくのであった。
そんな充実した毎日を送るリュー達の元に来客があった。
隣領のエランザ準男爵である。
その日は、祖父カミーザとランドマーク領の地図を広げて城壁の位置の確認をしていたのだが、いつもの如く来訪を伝える使者もろくに送ってこずに現れた。
当主である父ファーザが留守の時に来るなよ、と呆れるリューだった。
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