第31話 お見合いですが何か?

 年末、学校から一時帰宅していたタウロはゆっくりする暇も無く急遽ファーザに連れられてスゴエラ辺境伯の元に挨拶に出かける事になった。


 リューは、今度こそは父ファーザに付いて行って辺境伯の街を観察したかったので残念がった。


 聞けば今年一年、学校でずっと学年1位の成績だったタウロを、スゴエラ辺境伯がまた会いたいと言うのでまた連れていく事になったのだ。


 確かに、次にランドマーク家を引き継いで臣下になる予定の優秀な者をちゃんと確認したいと思うのもわかる。

 きっと、前回はあまり気にしていなかったのだろう。


 これはこれでランドマーク家の未来に関わる事なので、良しとしよう。


 でも、やっぱり行きたかった!


 リューの残念な気持ちはさておき、ファーザとタウロは出かけていった。




 二人が留守の間、何事も起きる事なく数日が過ぎスゴエラ辺境伯の元からファーザとタウロは戻ってきた。


 家族が緊急招集され、揃ったところで突然、深刻な表情のファーザから発表があった。


「タウロにお見合いの話がいくつか持ち上がった」


 という事らしい。


 聞けば、スゴエラ辺境伯が催すパーティーの席で、他の同じ辺境伯の与力である者達が、ランドマーク家の最近の勢いに、誼を通じておきたいと思ったのか、娘を紹介したいと集まってきたらしい。


 中にはタウロより八つも年上の娘もいる他、下は5歳の子供もいるらしい。

 仮に下の子は、婚約という事で成人まで待つとしても、年上の娘の方は、タウロがランドマーク家を継いだ時に何かと揉めそうだ。

 世継の事もあるし、気を使うし、それに歳が離れすぎてると統治について姉さん女房という立場で口を挟まれるかもしれない。

 もちろん、相手が必ず口を出すとは限らないが、立場的に気は使う。

 リューはそれを想像するとゾッとした。


 自分は三男で良かった……。


 と思う反面、兄タウロが可哀想だった。


 タウロは今は学校に集中したいと、全く乗り気でない為、すぐ断りたかったが、同じスゴエラ辺境伯の与力という横の繋がりを大切にしないわけにもいかない。


「とりあえず、会わない事にはどうしようもないわ。その上でタウロが判断しなさい」


 みながこの初めての状況に悩む中、母セシルが親としてまともな意見を言った。


 祖母ケイも頷く。


「出会いのきっかけなんてわからないものよ。タウロが気に入る娘が現れるかもしれないじゃない?」


 確かに、そうだ。

 自分も出会ってないがそんな子が現れるかもしれない。

 要はきっかけなのだから、お見合いも悪くないのかもしれない。


 ただ、今回のは相手の親側の打算が見え隠れしてるのがやっぱり嫌だけど……。


 リューの感想はさておき、タウロの学校が始まる数日前、タウロとお見合いをさせたい一行がランドマーク家に集まってきた。


 その一行が驚いたのは領地内の道が街道並みに整備されている事だった。

 ランドマーク家が勢いにのっているのは十分知っていた、噂も聞いていた。

 だがこれ程とは……。

 綺麗な道に感心しきりの一行は、移動の馬車の中、親が娘に気合いを入れる声が、いたる所で聞こえてくるのであった。


 だが、屋敷に着くと一行は違う意味でまた驚かされる。


 ランドマーク邸が、自分達の住む屋敷より大したことがないからだ。

 離れのトイレは煉瓦造りの立派なものなので、それだけに質素な屋敷が際立った。


「ランドマーク騎士爵殿はお金の使い方が変わっておられる」


 と、感想をひそひそと漏らす者達もいた。


 自分なら屋敷を真っ先に建て直すと言いたいのだろう。


「いやいや、ランドマーク騎士爵殿の、領地、領民への想いが見えた気がします」


 と、称賛した者がいた。


 スゴエラ辺境伯の与力から独り立ちしながらも、今もスゴエラ辺境伯派閥で知られる新興のベイブリッジ伯爵だ。


 この伯爵はお見合い話が持ち上がった当初はいなかったのだが、集団お見合いの席が設けられる事が決まると急遽参加を申し込んできた。


 リューが名簿を確認すると、側にいる娘は次女で、タウロと学校で同級生という事が備考欄に書いてあった。


 もしかしたら、娘の方が希望したのかもしれない。


 でないと普通、騎士爵家と伯爵家では格が違いすぎて参加しようとは思わないだろう。

 リューの個人的な感想だが、この中で、一番有り得ないが、一番、動機は純粋で、一番タウロと結ばれると良いのにと思うのであった。

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