第26話 祖父と父が凄いんですが何か?
土魔法で築いた石壁の上に胡坐を組んで座り込む祖父カミーザ。
魔力回復ポーションを飲みながら見つめるのは、オークの群れが来るであろう、森の方向だ。
「……数に惑わされたが、指揮してるのはもしや……」
考え込む祖父カミーザの横でリューは座って様子を見ていた。
相手のオークは大軍らしい。
多勢の相手に芋を引いたらその時点で負けだ、あ、ビビったらその時点で負けだ。
勝つにはビビらずまっしぐらにてっぺん(指揮官)のタマ(命)を取る、そこに勝機がありそうだ。
となると、先制攻撃……か。
そうリューが考えてる事を察したのか、
「……リューも、ワシと同じ考えっぽいのう?」
と、祖父カミーザが言った。
「……はい」
「敵の出会い頭に一発どでかいのを喰らわせるか。……お、間に合ったか」
カミーザが森とは反対側に振り向く。
スーゴ達、領兵隊が乗る馬車とその傍らを馬で進むファーザとジーロ、その後から徒歩で続く冒険者の一団だ。
「数では圧倒的に負けとるが、要はココと質よ」
リューに対して、カミーザは頭を指さしてみせた。
偵察に出ていた冒険者が森から走って戻ってきた。
「来るぞー!」
「数は約千!指揮官はオークキング!ハイオーク隊にオークジェネラルも確認!」
領兵や冒険者からどよめきが起きる。
「オークキングにオークジェネラルだと!?」
これはAランク帯案件だ。
単体ならBランク帯クエストだがこの数とリーダー格が複数となると話は変わってくる。
「やはりおったかー。いやーすまん。ワシの見落としだわい。キングはワシが、ジェネラルはファーザが相手するから後はお主ら頼んだぞ」
元Aランクの冒険者、赤髪鬼カミーザの発言だ、全員頷いた。
引けばランドマークの領民が蹂躙される。
どちらにせよ、逃げる選択は無い。
「ファーザ、合図を頼む。どでかいのを一発、リューと一緒に奴らに叩き込む」
ファーザは頷くと『索敵』スキルを駆使してタイミングを計る。
「12時、80m先に奴らの中心辺り」
森の木々で視覚では確認できないが、ファーザの『索敵』スキルは正確だ、カミーザは頷くと、
「リュー行くぞ!」
合図と共にカミーザは火魔法による大きい火球を、リューは土魔法による地中から伸びる岩の槍の範囲攻撃を放った。
地鳴りと轟音が森に鳴り響き爆発と共に森が広範囲に渡り抉れた。
冒険者達はこの威力に、
「これが噂のAランク冒険者の威力か!」
「あの子供は何なんだ!?」
「赤髪鬼の孫!?道理で…!」
と、驚いていたが、ファーザはすぐ様、
「スーゴ確認!」
と、名指しした。
呼ばれたスーゴは『鷹の目』で遠視し、吹き飛んだ現場を確認した。
「ハイオーク隊全滅。キング健在!ジェネラル負傷、オークも1割は削れたと思います!」
「よし、他の魔法使い、周囲に攻撃!」
ファーザの合図と共に領兵と冒険者の魔法使いが各々の最大火力で石壁の上から攻撃を開始する。
カミーザは、魔力回復ポーションを飲みながら石壁から飛び降りると他の戦士タイプの領兵、冒険者を率いて突撃を開始する。
ファーザも、魔法使い、遠距離タイプに細かい指示を出すと降りて参戦する。
リューはシーマとジーロと一緒に魔法使い達に魔力回復ポーションを配って回った。
戦いは始まったばかりだった。
祖父カミーザと父ファーザを先頭とした隊形でオークの群れへ切り込み、道を切り拓く。
カミーザとファーザの戦いぶりはまさに鬼だった。
紙の様にオークを切り裂きどんどん前に進む。
味方の援護もあって、あっという間にジェネラルに到達した。
ファーザが一歩前に出る。
「では、ワシはその奥のキングを頂くとしよう」
ジェネラルの脇をすり抜けようとするカミーザに、オークジェネラルは手にした戦斧で斬りつけようとした。
「私を前にしてよそ見をすると死ぬぞ?」
瞬時に接近したファーザが、オークジェネラルの戦斧を握る右腕をあっという間に斬り落とした。
「ナニ!?」
「経験の浅さが出たな」
ファーザの言葉と共に、その手に握る剣が煌めくと、ジェネラルの首は宙を舞っていた。
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