第12話 弟分が出来たんですが何か?

 シーマは愕然とした。

 自分もこの日の為に稽古を積んできていたつもりだった。

 だが、一つ年上の『騎士』持ちの長男タウロは格が違った。

 次男ジーロは一つ年下だがやはり戦闘系でも上位の『僧侶戦士』持ち、強かった。

 だが、三つ下の三男リューに関しては、体格も自分が勝ってるし、スキル的にも勝ってるから大丈夫だと思っていたのだが、全く歯が立たなかった。


 やはり、祖父や父に言われた通り、ランドマーク家は凄い一族なんだ!


 シーマは驕っていた自分を恥ずかしく思い、心を入れ替えて3人にお仕えしようと思うのであった。




 そんな心の中の変化をリューは知らなかったが、長男タウロに仕える事になるであろう年上のシーマに勝ったのはまずかったかもしれないと、冷静になってから反省した。


 表向きは戦闘系スキルは『器用貧乏』で、役立たずのはずなのだ、相手にしたらだまし討ちみたいなものだ。


 聞けば、シーマは戦闘系を剣、槍、体術の三つも持っているらしい、自信喪失していないだろうか、もしかしたら、騙されたと怒ってるかもしれない。

 どうしたものか、と悩んでいるところで家の廊下でバッタリ顔を合わせる事になった。


「あ……!」


 固まるリュー。


「剣の稽古の時はすみませんでした!」


 目が合うなり、間髪を入れず、シーマが謝ってきた。


「え?」


 きょとんとする、リュー。


「俺、みなさんを甘くみてました。これからは驕りは捨て、心を入れ替えて、お三方にお仕えします!」


 年上だがリューに舎弟が出来た瞬間だった。


「う、うん。よろしくね……」


 想像してた展開と全く違ったので、リューは戸惑いながら返事をするのであった。




「リュー様、流石っす!」


 リューの森への散歩について来たシーマがリューの狩りの腕を褒めた。

 今日に限って罠に獲物がかかっていなかったので、急遽、鳥を狩る事にしたのだが、シーマが弓矢が苦手というので代わりに射落としたのだ。


「リュー様は何でも熟すんですね、本当に凄いっす!」


 意外にシーマは弟分肌なのかもしれない。

 かといって兄貴分になる気はないのだが……。

 兄タウロやジーロに付いてればいいのだが、そのタウロとジーロに、


「リューは一人でよく行動して心配だから、付いてて上げて」


 と、お願いされたらしい。


 それで、今である。


 お兄ちゃん達、ボクに押し付けましたね!?


 違うとは思うのだが、シーマのヨイショが中々面倒臭いと思ったリューであった。


 まぁ、悪い子ではないので、その辺は我慢しよう。


 と、自分に言い聞かせるのであった。




 鳥を数羽捕獲後、マジック収納に入れて、そのまま農家の畑に向かう事にした。

 借金で首が回らなくなっていた農家に、コヒン豆を安定して生産できるように畑を作って貰ったので、今日は順調にいってるかの確認だった。


「森に生えていたコヒンの木は、枯らす事なくうまく畑に移す事ができました。タネを撒いた方の畑はあと二、三年はかかると思います」


「そうだね、安定生産にはあと数年はかかりそうだね」


「はい」


「生産ラインが安定するまでちゃんと支援するから安心して。それまでは、森と、ここに移したもので出荷しよう」


「買い手はつくのでしょうか?」


 農家にとってはそれが一番の心配である。

 もう、これにかけるしかないのだ。


「それは、大丈夫。契約を交わしてる商会から、ブツがもっと欲しいと言われてるくらいだから。ふふふ」


 前世なら、通報されそうな発言だが、事実、森からの採取だけでは量が足らず、加工したコヒン豆の粉は貴族の間で飲まれすぐ無くなっていた。


「ブツ?」


「あ、豆の事ね。粉でもいいけど、それはそれで、聞こえ方が危ないから」


「危ないんですか!?」


 農家の男はよくわからないが、危ないという言葉に驚く。


「あ、こっちの話です。大丈夫です」


「ならいいんですが……」


 一抹の不安はあったが、今のところうまくいきそうだし、信じるしかない農家の人々であった。

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