第11話 限界突破ですが何か?
剣の稽古が休みの日。
暇が出来たリューは、森に入る事にした。
ちょっと早いが罠の様子を見に行く事にしたのだ。
森の奥に入ると、大物狙いの落とし穴にビッグボアがかかっていた。
うまく仕込んであった杭に刺さって絶命してる様だ。
早速、穴から引き上げるが、想像以上に重い。
1人で直接は無理そうなので、木の上にロープを渡してそれをビッグボアの足にくくり付け引き上げた。
それでも、相当な力が必要だったが、初期レベルとは言え『器用貧乏』の能力のひとつ、[肉体強化]を使用する事でそれをカバーできた。
引き上げたところで、脳裏に声がした。
「『猟師』がG+の限界に到達しました。……『ゴクドー』の能力の発動条件<限界に挑戦し道を極めようとする者>を確認。能力[限界突破]を取得しました。よって、猟師の限界を突破します。……G+からF-ランクに上がりました。ランク昇格で器用と敏捷に若干のステータスボーナスが付与されました」
突然の『世界の声』だったが、リューは初めての体験だ、慌てた。
周囲を見渡し、自分の頭に直接響いているのを理解すると、そこで初めて『世界の声』に思いが至った。
「……これが世界の声……か。本当に声がするんだ……」
驚きからまだ熱が冷めないという感じであったが、
「あ、器用貧乏ではG+までしか上がらないはずなのに、限界突破したって言ってたよね!?」
それが本当なら、『器用貧乏』のスキルに悲観するどころか、逆に強みになるのでは?と思い至った。
器用貧乏は何でもできるが、何も高みに到達できない不遇スキル。しかし、『ゴクドー』の能力[限界突破]と合わさる事で最強になりうるのではないか?
もちろん努力は付き物だが、やりたい事を努力し高める選択肢が増えた。
これからは、もっとランドマーク家に貢献できると確信した瞬間だった。
「あ、ビッグボアの血抜きしないと」
慌てて現実に戻って作業するリューであった。
それからのリューは努力の鬼になった。
勉強にも身を入れてやるようになり、すぐ『教師』の限界に到達、能力で限界突破。ランク昇格で知力に若干のステータスボーナスが付与された。
剣の稽古でも、すぐに『剣』の限界に到達、そして限界突破。
槍、斧、弓、盾、メイス、体術とたて続けに限界突破してステータスが少しずつだが上がった。
武術以外にも、『商人』、『料理』なども限界突破し、『世界の声』が何度も脳裏に響くのであった。
そして……
「……パタリと、止んだなぁ」
一通り限界突破したからだろう、連日の様に聞こえ慣れ始めていた『世界の声』が聞こえなくなった。
「いや、これからもコツコツとやってれば、聞こえてくるはず」
と気分を切り替えるリューであった。
リューは気づいてなかったが、沢山の限界突破をすることで、一つでは大したことがない若干のステータスボーナスが、塵も積もれば山となるで、リューのステータスをかなり上昇させていた。
しかし、それに気づくのはだいぶ後の事であった。
季節は過ぎ、リューは7歳になった。
この時期になり、ランドマーク家には、新たな仲間が増える事になった。
執事のセバスチャンの孫が使用人として雇われる事になったのだ。
茶色い髪に茶色い瞳を持つ、負けん気の強そうな10歳の少年だった。
きっと長男タウロの代のランドマーク家の執事になってくれる事だろう。
いつもの剣の稽古にこの10歳の少年、シーマが参加する事になった。
最初、その負けん気の強さをみせて、長男タウロに挑んだが、『騎士』のスキルを持つ武闘派である、格の違いをみせつけた。
続いて、次男ジーロ。
こちらも『僧侶戦士』のスキル持ちである、年下と思い今度こそはと挑んだシーマを、圧倒してみせた。
そして、三男のリューの番である。
負け続けとはいえ相手はまだ7歳、それも『器用貧乏』と『鑑定』の、武術とは縁遠いスキルに、よくわからない『ゴクドー』持ちだと聞いていたので、シーマもさすがに気が引けた。
だが、主人であるファーザに、
「シーマ!戦う前から相手を侮るな、戦場ならすぐ死ぬぞ!」
と、一喝され剣を握り返した。
─結果。
リューの圧勝だった。
リュー本人も驚いていた。
普段、とても強いファーザやスーゴ、優秀な長男タウロに次男ジーロを相手にしていたので感覚が麻痺していたのだ。
いつの間にか、自分も強くなってた事を、リューは知るのであった。
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