第9話 ケツ持ちですが何か?
料理人とリューの力作、うどん。
それは最初、ランドマーク家の面々には不評だった。
ナイフとフォークで食べられないからだ。
フォークのみで食べるにしても麺が太すぎる。
箸を教える時間がなかったので、無理やりフォークで刺して巻いて食べて貰ったが、最初、不評だったにもかかわらず、その後はみんな完食だった。
「このもちもちした食感が美味しいわ!」
と、セシルお母さん。
「食べ応えがあって腹持ちが良さそうですね」
と、執事のセバスチャン。
「僕これ好きだよ!」
と長男タウロ君。
「ぼくもこのモチモチ好きだな」
と、次男ジーロ君。
「こんなおいしものをお前が考えたのか! やりおるのうリュー!」
と、祖父のカミーザ。
「しかし、太いから食べにくいな」
痛いところを抉ってきたお父さんファーザ。
「そうねぇ、もう少し細いと助かるわ」
追い打ちをかけてきた祖母、ケイ。
賛否両論あったが、味の方は問題なしのようだ。
なので麺を細くする事で解決する事にした。
その後、試しに予備の案のつもりで出した「トメートの実のソースのパスタ」の方がもっと好評だった、麺も細めだったのだ。
うどんがイチオシしだったのに!
前世ではうどんが大好きだったリューは少なからず凹むのだが、それを察したのか、
「僕はうどんが好きだよ、リュー」
と、長男のタウロに励まされるリューであった。
好評だったからには領内のみんなにも食べて貰いたい。
そう思ったリューは、自分も過去に何度も足を運んでいるお店、街の人気小料理屋に持ち込む事にした。
ここに認めて貰えれば、後が楽だと踏んだのだ。
「あら、領主様のところのリュー坊ちゃんじゃないかい。うちはお金、借りてないよ?」
女将さん渾身のジョークをドヤ顔で言われた。
「それ、前回食べに来た時も言ってたじゃないですか、もう」
リューの借金取り立ては、方々で行われていたので有名になっていた。
「ははは、いいじゃないかい!返せるのに返さない、それが出来ない奴から取り立てたんだから痛快な話だよ!でも、うちは借りてないから返せないけどね。あははは!」
領主の息子相手でも豪快である。
これぐらいの度胸がないとごろつきの相手はできないということだろう。
冗談はさておいて貰って、マジック収納から麺を出して交渉する。
「こりゃまた、珍しいわね」
女将の目が真剣になった。
調理したものもあらかじめマジック収納に入れてあるのでそれを出し、皿に取り分けて食べて貰った。
今回はリューのお勧めのうどんではなく、家族に好評だったパスタの方だ。
「これは美味しいわね!……うん、ぜひうちで出させて欲しいわ」
さすが女将、決断が早かった。
作り方を早速聞いてきた。
こちらで製麺所を準備し、そこで麺を作ってお店に朝一で卸す、女将側はソースの作り方を覚えて貰い、麺は茹でるだけである。
その説明をすると、
「そんなに簡単なものなのかい?」
と、驚いた。
リューは、はいと答えると、肝心の麺の単価を女将に伝えたのだが、
「そんなに安くて大丈夫かい?」
と、心配された。
もちろん、利益が出る価格なのだが、女将の目に映る麺は、貴族が食べる料理だと思ったらしかった。
「みなさんに食べて欲しいのであんまり高く値段を付けないで下さいね」
と、リューがお願いすると、
「あいよ。それならうちも助かるわ。庶民の味方がうちのモットーだからね。あははは!」
と、これまた豪快に笑うとすぐに、交渉成立だった。
この後の交渉は楽だった。
他のお店にも売り込むと、あの小料理屋が出すならうちもと、立て続けに契約を結んでくれたのだ。
早速リューはファーザの許可を得て、お金を出して貰い
人も雇い、作り方を指導する。
ただ、子供のリューが責任者なので不安の声も上がったが、
「ケツ持ちはランドマーク家ですので安心して下さい。あ、後ろ盾はランドマーク家の意味です」
と念を押して安心して貰ったが、ちょいちょい極道用語が出てしまう、リューであった。
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