幕間
「……ごめんなさい……ダメでした……」
VR空間を思わせるオフィス。その一角の椅子に座り、雫は申し訳なさそうに俯いていた。その方は細かく震え、瞳には涙すら浮かんでいる。対し、金髪を揺らして唯が肩をすくめた。
「まぁ、アレは仕方ないわ。話聞く限りじゃ勝てそうにないもの。そもそも向こうはルールすら把握していなかったんでしょ?なら、勝敗にこだわる方が馬鹿馬鹿しいわよ」
「それに雫はよく頑張ったよ。あんな化け物、倒せただけで万々歳だと思うな。とりあえず、お疲れ様」
千草が柔らかく微笑み、ミルクティーのペットボトルを差し出す。小さく頭を下げ、雫はそれを受け取った。
「……で、次誰が行くんだよ? 完全に神様の気まぐれか?」
「そうね。指令は全部私に来ることになってるけど……っと、来たわ」
机上のスマートフォンを手に取り、操作する。その画面をしばらく眺めたのち……小さく、息を吐いた。
「――雫、真冬。出番よ」
「え、えぇっ!? 連戦ですか!?」
「……」
ペットボトルを持ったまま、雫は派手に肩を震わせる。逆に、真冬と呼ばれた白髪三つ編みの少女は、表情を変えぬまま小さく頷いた。
「……わかった」
「おい、俺様はまた留守番かよ」
「アンタは適当にダラダラしてなさい」
「あたしも戦いたいー!」
「紅羽はジャーキーでも食べてればいいじゃない」
霧矢と紅羽の言葉はあっさりと切り返し、唯はツインテールを揺らして歩き出した。椅子からゆっくりと立ち上がる雫、薄紅色の瞳を虚空に向ける真冬。
「……そして、私にも出番が来たみたいね。まもなく転送が始まるわ。二人とも、準備はいいかしら?」
「……はい」
「勿論」
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