第173話 約束してたんだよなぁ……

 今回は、『彼が優しいんだ! えへへ♡』……というお話。



 あ、彼とは、同じ大学に通い、現在、都内某所で一緒に暮らしている、渡瀬わたらせつかさくん(仮名)のこと。つきあい始めて1年9ヶ月。同棲を始めてからは、早いものでそろそろ1年になろうとしている。

 そんなわたしたちを見て、最近の親友たちは、『もう、おなかいっぱい』って呆れてる。でもでも、今でも彼とはらぶらぶ(うふ♡)なのである。だけど、毎週見せつけられてる、我らが妹・美琴みことちゃん(仮名)は、最近、いつも遠い目をするようになってしまった。


 さらに、久しぶりに我が家に襲来してきた、中学来の親友、美亜みあちゃん(仮名)なんか、彼の胡座の上にちょこんと潜り込むわたしを見て、目が点になっていた。


「美琴? このふたり、いつもこんな感じか?」

「うん、そう……」


 美琴ちゃんの返事を聞いて、溜め息まできやがった。



 さて、かなり、脇道に外れてしまった。


 ことの発端は、ふたりが挙ってやってきた土曜日のことである。美琴ちゃんの授業が終わり、夕飯の準備をするのに、わたしがキッチンに立っていた時である。

 わたしの背後のリビングでは、この週、放送されたクイズ番組のことが話題になっていた。そう、『⬜︎大王』のことである。

 その番組でランクインした大学関係の施設のことを、美琴ちゃんが彼に聞いていた。


 わたしの耳にまで届いたソコは、『インターメディアテク』。東京駅、丸の内南口の目の前に建つJPタワーの2階にあるのだ。名前からは想像もできないけど、ちょっとした『博物館』である。

 去年の8月、『東京ビッグサイト』に行く時に、今度、一緒に来てみようと、彼と約束しただけで、実行されずになっていた所だ。

 そこに連れて行け! と、迫る女子ふたり。追い詰められるのは、彼、ひとり。


「最初は、ひな(仮名)とふたりで行こう! って、約束してたんだよなぁ……」


 約束、覚えててくれた! 3人に背中を向けたまま、思わずにんまりしちゃうわたし。

 しかし、わたしの背後では、彼の言葉を聞き咎めた女子ふたりが、タッグを組んで襲いかかっている。彼はタジタジのようだ。見えてはないけど、そんな雰囲気を感じる。


 わたしとの約束を、覚えててくれて、優先してくれたことが嬉しかったので、助けてあげることにした。


「仕方ねぇなぁ〜。日曜日明日、みんなで行くかぁ?」



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


 翌日曜日、最寄駅から地下鉄、途中で乗り換えて、すぐ、東京駅。もう、あっという間だった。今回は彼が先導する。まぁ、8月に同じ路線を使ったしね……。

 そんな彼、女子ふたりから、尊敬のまなざしが向けられている……ことには気づいてないみたい。でも、ちょっとは、彼の株も上がったかな?


 博物館は、おもしろかった。元々、こういうの、好きだからなぁ……。


 あ、美琴ちゃんには刺さったようだ。

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