第168話 こんなに期待されちゃうと

 土曜日、またまた、我らが妹・美琴みことちゃん(仮名)が、都内某所の我が家にやってきた。

 二学期の期末テストも終わり、あとは、冬休みを待つばかりで、さぞウキウキしてるのかと思えば、どうやらそうでもないらしい。



「どうした? テストも終わったんだろ? ……で? どうなんだよ、今回は?」

「ん? うん、テストはだいじょうぶ! 今回だって、ひなちゃん(仮名)に教えてもらってるからね! 今回は、特進(特別進学課程)に食い込めそうなんだよね〜」

「ほぉ、良かったじゃねぇか? それなのに、なに、渋い顔してんだ?」


 最近は、到着後、わたしがお茶を淹れてる間、わたしの彼・つかさくん(仮名)と雑談に興じるようになった美琴ちゃん。

 キッチンで、そのやりとりを聞いてると、どうやら、勉強以外の悩みがあるみたい?


 二学期の最終盤に待つイベントについてだった。


「ひなちゃんたちのおかげで、もうハードルがあがっちゃってあがっちゃって……。こんなに期待されちゃうと怖いよね?」


 去年の今頃は……、そういえばやらかしたねぇ〜、わたしたち。そんなわたしの呟きに、彼もコクコクと頷いている。

 イベントを開催できたのは、去年はほとんどなにもできなかったからであって……。


「去年、大ディベート大会で、ひなちゃんたちに負けた先生たちはノリノリだし……。終業式のクリスマスライブは、今回、会場2ヶ所だよ……。次の日のクリスマスパーティーなんて、今年は体育館を使うんだよ……。なんかさぁ、すごいことになってるんだよぉ、今年は!」



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


「楽しそうでなによりだよぉ」


 わたしが、そう言ったら、睨まれた。


「会長とか、もう、ひなちゃんきてくれないか? とかって言ってるし……。もう、冗談抜きで、ひなちゃん、来て!」

「その忙しいのだって、楽しい思い出だから、がんばれ〜」


 そう応援しても睨まれた。解せぬ。

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