第114話 疑ってるんだけど?

 合格発表の当日、合否を確認したわたしと彼と友人。


 あ、彼……とは、現在、リアルの世界で、わたしがおつきあいしている、渡瀬わたらせつかさくん(仮名)である。つきあい始めて、無事10ヶ月を迎えた。まぁ、現状はらぶらぶ♡なのである。いやん!

 そして、友人……とは、中学来の親友である、大槻おおつき美亜みあちゃん(仮名)である。幼馴染みと言えるほど長いつきあいではないのだが、何故か馬が合ったようである。



 親友の美亜ちゃんの行動が、異常に速かったことに戦慄を覚えるわたし……。

 この日、一緒に来なかった四人の親友から、『おめでとう』のメッセージが、瞬時に舞い込んできた。なんちゅうレスポンスの良さ?

 わたしのスマホに届いたメッセージは、どれも簡単なモノだった。まぁ、『おめでとう!』とか、『やったね!』とか……。

 そして、わたしのそれに、やや遅れること数分。数分?

 彼のスマホにもお祝いの言葉が届き始めた。画面を見ている彼が苦笑を浮かべているのがわかる。


「どしたん?」

「ん? なんか、みんな、すっげぇ長文なんだけど? それに、みんな、本当か? って疑ってるんだけど?」


 彼の困惑を聞いた、美亜ちゃんが笑いながら話しだした。


「みんな、ひな(仮名)の心配はしてないんだよ。受かる前提でいるからな! でも、渡瀬は落ちる前提だったから、悪い冗談だとでも思ったんじゃねぇの?」


 美亜ちゃん、みんなに、どんな内容で知らせたんだ?

 不思議に思い、わたしが美亜ちゃんを窺うと、小悪魔の微笑みを浮かべてた。



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


 卒業したばかりの高校にも報告に行った。美亜ちゃんが、先回りして連絡していたようだ。教員室に顔を出すと、普通課程の先生たちが大騒ぎしていた。

 今年は、特進課程から、この大学の合格者が出なかったそうで、ヒヤヒヤしていたそうだ。


 ここでも、先生たちから、『◯◯の奇跡、再び!』とかって、手荒い祝福を受け、困惑する彼の姿はおもしろかった。


 奇跡じゃないよ! 彼ががんばったんだ!

 ちょっとだけ、反抗的に頬を膨らますわたしには、気づいてないんだろうな……。

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