第107話 ……その手があったか?

 昨日の騒動を綴っておこう。


 先週のうちに、親友の美亜みあちゃん(仮名)から、大筋だけだが話は聞いていた。

 そう、今月14日の、女の子たちにとっての一大イベント、バレンタインデー。そのイベントには必須の、手作りのチョコレート。イヤ、必須なわけはないんだが……。

 美亜ちゃんが力説したらしい。ということで、日曜日の夜……。



明日月曜日、女子は全員出席すること!』


 そんな、グループメッセージがわたしのスマホにも。


 明けて月曜日。元々、登校も任意になってるこの2月。わたしたちのクラスの賑わいはすごかった。女の子たちが、揃ってキャイキャイする様子は……、どこか異常。そう呟いたら睨まれてしまった。

 手作りのチョコレートを贈りたいらしい。溶かして固めるだけだぞって呟いたら、やっぱり睨まれた。


 そんな、かわいい? 騒動の後、たぶんわたしたち最後のイベントは、またしても大事おおごとになったりするわけで……。


 女子一同、ということで、クラスの男子の全員(10数人)分を作った。監修、わたし。

 ついでに、三年間、お世話になったお礼の意味をこめて、先生たちにも渡そうと提案した(美亜ちゃんが)ら、みんな賛成してくれた。

 全員で分担して、できあがったそれを見た時の、みんなの達成感がすごかった。



 でも、女子一同からの贈り物を、みんなで作っただけでは終わらなかった。

 特別な男子に贈る、その一個を作りたいという子が何人かいた。


「仕方ないなぁ……。まとめて面倒みてあげるよ」

「リア充は余裕あるよね? ひな(仮名)は、自分にリボンつけて、渡瀬わたらせ(仮名)のトコに行くのか? イヤ〜、えっちぃ!」

「教えてやんねぇぞ!」

「冗談だってば」

「……その手があったか?」


 わたしの返事に、みんなが揃って引いていた。冗談に決まってるのになぁ。



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


 月曜日の夜に回ってきたグループメッセージは、男子たちへの非常召集だった。ものの数分で、男子全員の『登校するぜ!』メッセージが展開されたのには驚いた。

 チョコの破壊力って……すごい。


 火曜日の騒動に続く……。

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