第103話 似合わなかったかなぁ?
第102話の後刻談である。
会場周辺では、お昼ご飯を食べるのにも無理があったので、都心まで戻ってきた。
ターミナル駅近くのファミレスにて、漸くひと心地ついた。そこでの、彼、
翌日、それを友人たちに話したら、みんなから……。「惚気んじゃねぇ!」って、揃って呆れられた。
う〜ん、仕方ないじゃん。この日の彼は優しかったんだよ!
「すごい人出だったな」
「コミケほどじゃないよ。でも、5.000人超えたって言ってたから、すごいはすごいよね」
この『文学フリマ』、前に、一度、父に連れてきてもらったことがある。『コミケ』もだし、さらには、東京ドームも東京競馬場も。こういうイベントごとのすごい人出の経験と、迷子になった時の対処法を、父に教えられたと言ったら、これにも驚いていた。
「いつもスカートなのに、今日はどうした?」
「動きやすいほうがいいと思って……。似合わなかったかなぁ?」
「イヤ、そんなことは……、ないって言うか、初めて見たけど……、かわいいって思う」
言われたわたしが照れてしまった。もぉ!
でも、この話をした時の、
この時は、黒のジーンズにネイビーの、けっこう大きめ(父の……)パーカー。白髪混じりの髪は全部上げて帽子の中に……。
「それにしても、電車の乗り換えとか、そんな簡単によくできるな? 海に行った時もそう思ったけど」
「お父さんと出かける時は、基本、電車だったからね」
小さい頃から、ちょっとした用事の時は、電車が多かった。交通の便がよかったのもあるけれど、電車の乗り方くらい覚えさせておこう……という、父の思惑もあったようだ。今にして思えば感謝だけど。
特に東京駅での、『丸の内線』から『JR』への乗り換えに、彼は驚いていた。
あたふたして、キョロキョロしている彼の手を繋いで先導してあげた。
これは、わたしと
捻りもオチもないけど、
「モノレール、初めて乗ったんだよ」
偶然にも、行きは一段高くなってる一番前の席に、ふたりで座れた。静かにしてても(当然だけど)ワクワクしてるのが、まるわかりの彼。もう、かわいくて仕方がない。でも、茶化すのは我慢した。
帰りは、運河側が見える席に並んで座れた。
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