第102話 デートもしたほうがいいよ!

 日曜日のことである。

 前日、勉強終わりで、友人の妹、熊谷くまがい美琴みことちゃん(仮名)が、うちに泊まったけれど、朝には、意外なほどにあっさりと普通に帰って行った。

 そして、最寄りの駅まで、散歩がてらに送っていくと……。


「たまには、渡瀬わたらせ先輩とデートもしたほうがいいよ! お邪魔虫は退散です!」


 そう言って、電車に乗り込んで行った。

 あぁ、これは、姉の真琴まことちゃん(仮名)に釘を刺されてるな……。



 そんなわけで、熊谷姉妹の言葉にありがたく乗っかることにした。と言うか、わたしのわがままに付き合ってもらうことにしたのだ。

 なにか、用事を見繕みつくろわないと誘いだせないわたしって、やっぱり駄目ダメなのだろう。


 と言うことで、出かけた先は、この日行われてた『文学フリマ』。

 ここ、カクヨムでも、『参加します!』発言が、近況ノートにもけっこう投稿されてたから、ご存じの方も多いのでは……?

 実はわたし、中学の頃、一度だけ父と一緒に行ったことがある。コミケほどではないにしても、すごい人出だったのは覚えている。さすがにひとりでは、あの中に混じるのに勇気がいる。


 朝、意外と早い時間だったのに、彼、渡瀬わたらせつかさくんから、オッケーの返事。そう言えば、彼とは中間テスト明けに博物館に行ったきりだ。彼女なのに、まともにデートもしてないなんて……、やっぱり駄目ダメだ。



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


 彼は、最初から最後まで驚きっぱなしだった。

 まずは、彼の前では見せたことがなかった、ボーイッシュ(動きやすいほうがいいかなって思って)なわたしの格好に驚き。都内の電車の乗り換えに迷わないわたしにも驚き。初モノレール(羽田空港へはいつも車だったそうだ)に驚き。

 そして、会場の人の多さに驚いていた。


 それでも、『疲れたでしょ?』と、いちおう気づかったわたしに、『ゆっくり見て回ればいい』って言ってくれるのは優しいからなのだろう。

 そういうところが、素敵なんだって思う……。

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