第80話 ツンデレってわかります?

 昨日第79話の続きを……。

 現在、わたしの彼氏である、渡瀬わたらせつかさくん(仮名)の、人気の上昇が止まらない。



「おい、ひな(仮名)。そろそろ紹介しろ! お前の彼氏なんだろ?」


 お父さんのお友だちが経営する『居酒屋』さんに、先日のお礼と称して、無理やり渡瀬くんを誘った。お父さんが……。

 そして、お店の大将(本人がそう呼べとうるさい)に、彼の紹介をさせられたところから、後のお話である。

 わたしは、彼がこれほど社交性が高いとは思ってなかった。そう言えば、知り合った当初、彼はムードメーカーを自称してたっけ。


 会話多めで……。完全に再現できたとは思えないけど、ご了承ください。


「これじゃあ、おちついて、ご飯、食べらんないでしょっ!」

「いやぁ〜、司くん、愛されてんね?」

「え? そうですね。こんなに気を使ってくれる彼女がいて嬉しいです。俺にはもったいないくらいで……」

「司くん、やめて! 恥ずかしい……」

「わかってんなら、言うことないか? たいせつにしてくれよ」

「もちろんですよ」

「ひなは、俺たち全員にとって娘みたいな子だからな。泣かせたら……、わかってるな?」

「はいっ! ひな以外の彼女は、俺には考えられないです。泣かせたりしませんよ」

「だから、やめろって! わたしが恥ずかしいじゃないか」

「ひなのあれは照れ隠しだから、気にすんな」

「はいっ! ツンデレのフリするひなもかわいいですよね? あ、ツンデレってわかります?」


「司くんのお弁当作戦は、今後中止としますっ!」



 わたしの宣言を聞いて、狼狽うろたえる渡瀬くん。

 俺は、常連さんたちの質問にに答えていただけだ……とか、ひなのことを自慢してみたかっただけだ……とか、言い訳をしてるけど。


「暫くは許してあげません!」


 頬を膨らませて外方そっぽを向くわたし。許しをこう渡瀬くん。

 そんなわたしたちを見て、常連さんたちのテンションがさらに上がった……気がした。


「暫くは……って言っただろ? すぐ許してくれるって」

「はいっ! 俺もそう思ってます!」

「彼女に尻に敷かれてるほうが幸せなんだぞ、たいがい……」

「おぉっ、先輩方のご意見は、説得力がありますね。参考になります」

「司くん? わたし、ホントに怒ってるんだよ」

「司くん、ひなの言うことだから、そういうことにしといてやろうな」

「はいっ!」



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


「俺、こんなひな、すごくかわいいと思ってるんですけど……。ひなは、それを否定するんですよ。俺の美的センスは間違ってないはずなのに……」


 渡瀬くん、まだ、言ってるのか? でも、常連さんたちに、揃って肩を叩かれていた。それって……?

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