第44話 誰だよ、そんなこと言ってんの!

 月曜日からのわたしと渡瀬わたらせくん(仮名)は、普通にいつもの日常をすごしていたはずだった。

 別に、人前でイチャイチャするわけでもなく、ふたりでベタベタしていたわけでもなかった。

 ただ、それまでと違ったのは、渡瀬くんがわたしを、『ひな(仮名)』って名前で呼ぶようになったことだけだった。

 事情をすべて知ってる美亜みあちゃん(仮名)は、終始ニヤニヤしてたけど。



 なんだろう? 1週間(都合5日)が過ぎたというのに、このクラスのお祭り騒ぎがおさまらない。なにが、みんなをそこまでかき立てるのか……?

 わたしの学年、三年間クラス替えがなかった(多少の移籍はあったけど)から、つきあってる子たちも何組か存在しているのは知ってる。その子たちの時は、ここまでのものはなかったのに。

 ニヤニヤ顔の美亜ちゃんが説明してくれた。視線は渡瀬くんに向けているが……。


「今や、学校一の有名人で、一度も友だちだっていう主張を曲げなかった、あの『ひな』がついに陥落か? 相手は誰だ? あのラッキー王子(渡瀬くんのことね!)か? というのが、我が校のトレンド1位だぞ」

「なにがトレンド1位だよ。みんな、おもしろがってるだけじゃん」

「そんだけインパクトがあったんだろ? 未だに、特進(特別進学過程)四天王と互角なのは『ひな』だけだし……、大イベントのプロデュースだろ? これのおかげで、今年こそは学園祭ができるかもって、他所よそのクラスじゃ盛り上がってるぞ。ほかにもいろいろあるけど……、極めつけは、野球部の助っ人!」

「野球部の試合、誰も見に来てないじゃん?」

「なに言ってんだ? 1年生部員がいたじゃないか? そいつらが拡散してんだよ。女神さまが現れたって……」

「誰だよ、そんなこと言ってんの! ねぇ、ぶっ飛ばしてきていい?」



 これは、わたしと親友みあちゃんと、そのほか、少ない友だちを巻き込んだ、掛け合い語録。


 捻りもオチもないけど、彼女みあちゃんがいなかったら、今のわたしはいなかったと思うし……。


 今日は、こんなドタバタが朝から続いてる。みんな、なにかしら、わたしに絡んでくる。もう、お昼も過ぎたというのに、わたし……、渡瀬くんとひと言も口きいてないよ。


「今日、ひなん行くからな! 真琴まこと(仮名)も莉緒りお(仮名)も行くって言ってるから」


 美亜ちゃんが宣った。

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