★バグ・ヴィラン【織羅レオノーラ】
第15話・最凶レオノーラ
二つの星雲が交差衝突する【銀牙系】…… 海賊大航海時代も終焉に近づいていた頃──『織羅レオノーラ』幾度目のループ世界、レオノーラ『黒の巡目』
銀牙系を航行する、衛星級宇宙船『極楽号』の船橋で、船長席にふんぞり返って座り。
テーブルの上に足を乗せた、目つきが悪いガンファイター姿の織羅レオノーラがいた。
骨つきのナゾ肉を前歯で千切り食べている、バグ・ヴィランのレオノーラが呟く。
「固くて、クソまずい干物みてぇな肉だな……ぺっ」
食べていた肉を床に置いた壺に吐き出したレオノーラは、前の航行席で極楽号を操縦している、カブト・ドラコニスの後頭部をブーツで蹴った。
「おらっ、竜頭、もっと早く船をとばせ」
片目に眼帯をしたカブト・ドラコニスが生気の無い声で答える。
「はい、すみません……レオノーラさま」
「あぁ、なんだそのちいせぇ声の返事は……竜頭、てめぇ残ったもう一つの目も、えぐり取ってやろうか」
極楽号の船橋には、レオノーラが居る時は、いつも戦々恐々の怯えた空気に満ちていた。
ディアが恐る恐る、レオノーラに言った。
「レオノーラさま、惑星ビビリの代表から、苦情の通信が入電しています……惑星の植民地化をやめてもらいたいと」
強化ビンに入った飲み物を飲み終わったレオノーラが、壁に向かって空のビンを投げつけ、ディアは身を縮ませる。
「オレに意見や進言するのか、いい度胸しているじゃねぇか……クズ惑星が竜頭。ビビリ惑星に向けて進路変更……ウサギ女、破壊砲の発射準備しとけ」
気弱そうな表情をした、軟鉄ウサギの月華が怯えた様子でレオノーラに言った。
「あのぅ、レオノーラさま……いくらなんでも、惑星を丸ごと破壊砲で破壊するというのは……」
「ウサギ女、先におまえの方を丸焼きにしてやろうか……ご注文はウサギの丸焼きにですかぁ? おまえはオレの命令を聞いていりゃいいんだよ」
誰も逆らえない、銀牙系の最凶最悪女……それが、織羅レオノーラだった。
数十分後──極楽号は、惑星ビビリの星域に跳躍到着した。
宝石のように美しい惑星ビビリ。
レオノーラが指示を出す。
「破壊砲発射用意、発射トリガーシステムをこっちの席に移せ……オレが直々に、撃ち抜いてブッ壊してやる……かかか」
レオノーラの席に発射トリガーが、せり出してくる。
極楽号の瞳が開き、破壊砲の発射口が現れる。
モニターを見ていた月華が言った。
「惑星ビビリから、脱出する船団があります」
薄笑いを浮かべて、月華に指示をするレオノーラ。
「逃げ出さねぇように……
「そんなコトをしたら……惑星から誰も脱出は」
「さっさとやれ、ウサギ女! ご注文はウサギの丸焼きにですかぁぁ」
悲しみの表情で、惑星を二重のシールドで包む月華。
照準が惑星にロックされ、笑いながらレオノーラは発射トリガーを引く。
「砕け散れ! クズ惑星! かかかかっ」
悪魔の閃光が惑星を貫く、爆発する惑星ビビリ。
惑星が誕生してから一番の輝きだった、全生命を一瞬で死滅した……悪魔の輝き。
「かかかかっ、でけぇ花火が宇宙に咲いたぜ……スッキリしたぜ」
椅子から立ち上がった
レオノーラが、船橋のクルーたちに向かって言った。
「少し自分の部屋で仮眠する……邪魔したら、真空の宇宙に放り出すからな」
船橋から通路を通って自分の部屋に入ったレオノーラの周囲が、濃霧に包まれる。
「なんだ? こりゃ」
入ってきた部屋のドアは消えていた。
霧の中から二人の人物が現れた。
ウェルウィッチアと飛天ナユタだった。
「はぁ~い、レオノーラちゃん」
怪しむバグ・ヴィランのレオノーラ。
「なんだ、ウェルウィッチアの超ババアじゃねぇか……この霧はいったい何だ?」
ウェルウィッチアの頬が、ヒクッヒクッと痙攣する。
ウェルが言った。
「口が悪いわねぇ、さすがに今回のループ世界のバグ・ヴィラン織羅レオノーラは、非道すぎる……このままだと。銀牙系自体を崩壊させかねない……やり直しましょう、ナユタお願い」
飛天ナユタが、レオノーラの目の辺りを手でつかみ覆う。
「てめぇ! 何しやがる! おまえいったい誰だ?」
「このループ世界では、出会わなかった者……次の世界で会おう、レオノーラ」
「なに、ワケわからねぇコトを! 手を離せ!」
レオノーラの意識が、ナユタの手に吸い取られるように薄れていく。
「や、やめろぅ! オレを消すなぁ! オレは……オレは誰?」
レオノーラの意識は濃霧の中に包まれた。
次にレオノーラが、我に返った時──織羅レオノーラは一人、草原惑星の丘に立って夜空に浮かぶ青い三日月を眺めていた。
優しい表情で呟くレオノーラ。
「綺麗な月」
レオノーラは、太モモのレッグガンホルダーに収まっている、黄金銘銃『レオン・バントライン』を擦りながら言った。
「自分探しの冒険をはじめるには、最高の月夜だと思わない? レオン・バントライン……あたしに力を貸して」
★バグ・ヴィラン【織羅レオノーラ】~おわり~
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます