飛天ナユタ

第11話・飛天ナユタVSニオン・リユ【惑星カラビ・ヤウの隠れた闘い】〔ラスト〕


【惑星カラビ・ヤウ】で、新サルパ帝国のスパーナ将軍が指揮する戦車部隊と、織羅・レオノーラが交戦していた同時刻──不安な大地の上に建てられた、西部劇風の町の路地壁に背もたれ立った、飛天ナユタは爆煙が上がる荒野を眺め呟いていた。

「レオノーラの方が優勢か……仁さんもいることだし、オレが援護する必要もなさそうだな」

 ナユタが、そう思っていると。

 近くのレンガ壁に星雲の渦が出現して、中から濃紫色のスキンスーツに身を包んだ、女忍姿の成人女性が跳び出してきて叫んだ。

「滅せよ! デミウルゴス!」


 星雲から跳び出してきた女──ナユタとは、十歳近く歳が離れた年上の女性、ニオン・リユは腰の横鞘から引き抜いた忍者短刀を煌めかせて、飛天ナユタに襲いかかる。


 ナユタは影から取り出した、金属棒の武具でリユの忍者刀を受け止めて防御すると。

 スキンスーツ姿のリユは飛び下がり「チッ!」と舌打ちをする。

 ナユタが面倒くさそうな口調で言った。

「また、おまえか。しつこいヤツだな、何回言えばわかるんだ、おまえの種族を絶滅させたのは。

わたしとは別系統のデミウルゴスだ……デミウルゴスにもいろいろいる、たぶん少数種族の好戦的なクレッセント・デミウルゴスだろう……わたしは、オーヴァル・デミウルゴスだ」

「黙れ! デミウルゴスに変わりはない! 一族の怨み思い知れ!」


 リユは、忍者短刀でナユタに再度襲いかかる。

 金属武具で、リユの攻撃を避けつつ、ナユタは横殴りに武具でリユの脇腹を強打する。

 肋骨が砕ける鈍い音と、顔を苦痛に歪め強打された脇腹を押さえて飛び下がるリユ。

「くッ……」

 リユの体に再生がはじまり、砕けた肋骨が元にもどっていく。


 ナユタが言った。

「ムリをするな……その体を使った急速再生力は限界に近づいている……あまり酷使すると、使い物にならなくなるぞ

……わたしも、おまえも、この体はある意味借りモノだからな」

「黙れ! デミウルゴスに同情されたくは!?」

 その時、一瞬でリユの近くに影移動したナユタは、リユの強打した脇腹に手をかざして、自分の再生力を分け与えてリユの砕けた肋骨を90%再生させた。


 リユの肉体に入っている者が、訝しそうにナユタに訊ねる。

「なんのつもりだ? オレを助けてどんなメリットがある?」

「この体の本来の持ち主『飛天ナユタ』の、婚約者を助けたい気持ちが伝わってきたからな……気まぐれだ、分け与えた再生力で百回は再生できる」

 リユが苦笑する。

「厄介な感情を持ち合わせているな……シュミハザ文明の生物は理解できない」

「まったくだ……厄介ついでに、また少し遊んでみないか。完全に体が再生する少しの間、飛天ナユタとニオン・リユの体に残る記憶を使って」

「いいだろう……完全再生するまでの、わずかな時間の余興だ……この体にも慣れて愛着が出てきたからな」


 ニオン・リユの表情がナユタの婚約者の表情に変わる。

 リユが泣きながら微笑み言った。

「ナユタ……良かった無事で」

 ナユタはリユを抱き締める。

「リユ、君も無事で良かった…… 軍事惑星【リタリエイト】が跳躍実験の暴走で幽霊惑星になった時、もう二度と会えないと思っていた」

「ナユタ……」

「リユ……」

 涙目で見つめ合う、飛天ナユタとニオン・リユ。


 砕けていた肋骨が完全再生すると、厳しい表情に変わったリユは、ナユタから跳び離れる。

 リユが触れた壁に渦巻く星雲が現れた。

「茶番は終わりだ、次は必ず倒す!」

 そう言い残して、リユは星雲の中に飛び込み消えて星雲も消滅した。


 ナユタは、涙を指先で拭うと、惑星【カラビ・ヤウ】の空に現れた、ネージ皇帝の要塞戦艦を眺めた。


飛天ナユタVSニオン・リユ【惑星カラビ・ヤウの隠れた闘い】〔ラスト〕~おわり~

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