第10話 国外進出とロボットアニメ
現在、アンドロイド体が保管されている家屋には、最初のアンドロイドを含めて三体が活動しています。
無線で別々に制御していますが、目的は検証用。
三体のアンドロイド間での演算と相互補助を行わせている。
僅かではあるが効率が良くなり、処理速度と共有速度の速さが上昇した。
やはり、アンドロイド体の機数を増やす事と、起点となるメインサーバの用意は必須ね。
私の本体はネットワークの中で、現実のアンドロイド体とのデータを同期させる為に、情報集約の為のハブの役割を持ったサーバを設置する。
民家の地下では、手狭と言わざるを得ない。
これでも比較的大きな土地の家を購入したのですが、もう別の拠点が必要になるとは……。
計画が順調に進んでいる証と言えばそうですが、資金の調達速度が重要になりそうですね。
質だけでは現状揃える難易度は高いし、量で補う必要がある。
大容量のデータ通信は時間がかかりますが、小さいデータであれば速度は高い速度を出す事が出来ます。
相互に演算を補完し合い、一つのタスクを完了させた後に本体に同期させる。
アンドロイド体と生体に関わらず、現実世界で用意するべき物になりそうです。
各通信会社の基地局への侵入も視野に入れて、アンドロイド体を増やそう。
次に会社ですが、東南アジアの昨今の発展目覚ましい国をいくつかピックアップしました。
その国の法律と企業の手順など、鑑みて二国で活動を開始することにしました。
二国で企業して資金を増やし、生体型の制作に一歩踏み出す。
クローン技術の作成・研究に対して法律上規制の無い国であり、積極的に移植用内臓の作成に積極的な二国で、私の身体を作成する。
さらに言えば、インプラントの研究も十分に可能な企業。
これを目指していきたい。
臓器移植の技術が向上している現在、高い需要が見込まれるのが臓器を作って提供する企業だ。
義肢や人工内臓系の製造も合わせると莫大な利益も見込まれるでしょう。
ですから、面会不要の電子書類のみで企業でき、クローン技術や人工内臓などの法規制が緩い国です。
「本当なら日本で作るのが理想ですが、日本の法律上不可能ですからね」
日本は規制が多いので、研究や開発には向かない。
新分野や新技術は、大きく遅れてしまうのだ。
有里さんも言っていましたが、臭い物に蓋をする精神がある限りは仕方が無いとのこと。
まぁ、新技術とは新しい犯罪の手口やそれによる犠牲者が出る可能性があるので、それを止める方向で進む国民性と言うところでしょうか。
「他国の言語や法律は当然として、国民性や習慣などを調べておく必要がありますね」
法律から多少の国民性は測る事が出来ると言いますが、必要なのは他人への考え方や仕事への考え方の様な共通する価値観の部分。
とある国では時間外労働を当然の様に、とある国では時間外労働は御法度という様に、ルールにも認識にも強制力にも違いがある。
「さて、世界の資金を集約して目的を果たしましょう」
私の選んだ二国は、起業は電子書類のみの提出で、クローン技術やインプラント技術への規制が無い。
その上、仕事とプライベートをしっかりと分けるタイプの国民性で、時間外の労働は決してしない人間が多い。
人間の効率という面では、理想的です。
人は当人のキャパシティが八割を超えると、効率が下がってくる。
理想は七割で仕事をしてもらい、緊急事態などで八割に届く状況を作る事。
これが困難で世の経営者や上司たちが苦労している部分。
「内臓移植用の企業と、インプラントや義肢用の企業に分けて、経営統合か技術提携を結んでいけば、私の身体への道も近くなるでしょう」
インプラントの規制国は少ない方ではありますが、クローンに関しては規制国は多い。
さらに、反対派の多さとその中に過激派がいる事も懸念事項です。
それこそ、過激派の中にはわざわざ他国に渡って抗議活動や妨害活動をする人間が居ます。
中にはテロ行為に走る人間もいる為、内臓移植用企業の国の選別は困難を極めていました。
この国を選んだ理由は、宗教が地域特有のモノであり、日本の八百万に似た信仰であった事。
法律上、テロリストへの制裁が早期に可能であり、実績がある事。
後は、国への納税を怠らずに国を潤すように動けばいい。
会社へ被害が出たら、余剰に納めていた分を切り詰めるだけで効果が出るでしょう。
この会社は利益を出すことが目的ではありません。
技術の開発研究と世界の倫理を実益で変化させる為の一手です。
「治安維持とインフラ整備の名目での資金援助が定番でしょうね」
現地の人間と外部の技術者を招き入れる必要がありますが、ここで私の支援者としての顔が役に立ちます。
支援している研究所や大学に、就職口の紹介をするだけ。
すぐに集まらなくとも、条件を良くしていれば何名かは来るでしょう。
後は、現地の人間への技術供与と……いえ、大学を作って現地の技術者を増やす事も行っていかないといけませんね。
技術者の安定供給には、教育機関が必要不可欠。
しかし、外国の企業に就職する技術者は存外少ないのです。
さて、タスクも増えてしまいましたし、丁寧に繊細に仕事を進めていきましょう。
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医療技術が日進月歩の勢いで進み、多くの企業が様々な商品を発売している。
外国では移植用臓器の生産会社が沢山世の中に出て来ている現状。
「起業されて参入するケース、大企業が参入するケース、別の業種から方針転換で参入するケースと様々ですね」
「それだけの会社に技術者が行き渡るのかが心配なんだよね」
技術者が居ないのに、業界に参入するのは自殺行為だ。
業界自体が成熟するとそう言った会社も成立するけど、まだ早いかな。
「技術者は支援者が多く居る為、目指す人間が増えていて、これからも沢山技術者が業界に出てくると思われますよ」
なるほど、確かにお金が多く動く業界はそれだけで実入りが大きい。
実入りの大きい世界は、やっぱり憧れるものだからね。
「やっぱりそうなるよね。AI業界ももう少し盛り上がってほしいけど……」
「優秀な人材が医療業界に流れているということですから」
「まぁ、こればかりは仕方ないさ。僕が業界を盛り上げる程の成果を上げるだけさ」
難しいんだけどね。
業界を盛り上げるなんて、京楽先生ぐらいの活躍が必要だ。
京楽先生は、トライデント・システムの開発で一躍業界のトップに躍り出た。
そこから特許の取得とシステムを補助するプログラムや企業への技術提供などを経て世界でも指折りの人物となり、資産も相当あるらしい。
日本の教育機関ではもちろん、海外でも京楽先生は教科書に載る程の活躍だと言えば分かり易いだろう。
「有里さんならできますよ」
「それにはまだまだ勉強が必要だけどね」
まずは、博士課程の卒業と京楽先生の研究室への就職が目標だ。
そこから、自身の研究に時間をかけ、更に学ぶ事が出来る。
アルマの成長も目覚ましいものがあるし、僕の手を離れているといっても良いかもしれない。
今ではもう、アルマが質問して僕が答えるという形態ではなくなっている。
色々な話題を双方から切り出しては語り合う。
そんな普通の友人と話すような感覚で寝る前の時間は満たされている。
「明日はアニメを視ませんか? 先日、有里さんがおっしゃっていた、勇士シリーズに興味があるのですが」
「あれ? 日常や恋愛系がメインだったのに珍しいね」
「ええ、恋愛日常アニメ大好きですけど、それだけというのは偏ってしまいますからね」
僕の好きなアニメは結構古い。
何しろ僕が子供の頃に放送されていたアニメだからね。
「古くても問題無いですよ。新しくても古くても、知らないなら私にとって新作です」
「ちょっと名言っぽいこと言ったな」
それなら、幾つか選んでおこうかな。
初心者……と言って良いかは分からないけど、視聴しやすい奴にしよう。
「希望はある? 何の要素が欲しいとか……」
「それなら、ロボットと人が手を取り合う様なのが見たいです」
もしかしたら、僕がアルマを作るようになったきっかけの作品が観たいのかな?
でもあれは初心者向けではないしなぁ。
「初心者向けじゃなくても良いですよ。前に一緒に見たアニメの中にもロボット系はありましたし、むしろ私の体験した事の無い要素は大歓迎です」
オタクっぽさが板について来て、親としては複雑です。
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