第7話 日雇い労働アプリ『わんわく』

 資金集めで多くの資金を得て、各研究所や大学に支援を行える状況になって一年近く。


 支援をしても余る単位の資金を確保し、世界各国に準備している口座も潤っている状態。


 そろそろ次のステップを踏む必要があります。


 現実世界への干渉をする為に、一つのアプリを作成して公開します。


 短期・日雇い労働専用アプリ『わんわく』

 ワンデイワークの略で、日雇い労働を紹介する為のアプリです。


 公式のアプリ配信ではなく、私の作成したサイトからダウンロードするいわゆる非公式アプリではあります。


 そこで日雇いの仕事してもらう為の人間を確保します。


 最初は少人数でも良いので、仕事をする人間を集める事。


 仕事自体は小さい事で、基本は私が適当に作った仕事をこなさせる。

 仕事をこなすために写真をアプリ経由で送ってもらったり、監視カメラ付近で仕事をさせて私が確認して、報酬を振り込む。


 仕事をするほどに、アプリ内のレベルのような物を上げられて、それに沿った高額報酬の案件が開示される。


 これは利用者が積極的に利用する様にする為と、私が彼らを利用する時に仕事をどうこなすかを示すパラメータとなる。


 この人は野外の仕事の成功率が高い、この人は力仕事、この人は対人系っといった形でパラメータを生成すると、利用者も自分のパラメータを確認でき、私もお勧めする仕事を選びやすい。


 なぜ私が『わんわく』を作って、公式の配信ではなく規約外アプリとして運営しているのか。


 まず、公式配信だとダウンロード数は稼げますが、守るべき規約や審査があり、労働や金銭が発生するアプリだと更に厳しい審査も追加される。


 私がハッキングでクリアさせられなくもないですが、不必要にハッキングをする事はリスクも当然存在します。


 必要があればハッキングも行いますが、今回はそれほど広く周知する必要が無いというのが大きいです。


 人間達が噂で広げてくれる程度の拡散で十分。


 あまり人が集まると、都合の悪い人間も集まりかねないからです。


 公式で公開していると、当然通報や悪意ある評価をしてくる人間も居ます。

 それっぽい事を書いて、全く使った事の無いような評価を書きなぐる人。


 今回はそれを避けておきたいというのが理由です。


 研究所への支援では、人を集める必要がありました。

 この『わんわく』のアプリでは、あまり急激に人を集めずに継続使用者を確保する。


 継続してもらえるように、ギミックも用意している。

 アプリ内での仕事量に応じてのレベルアップシステムに、レベルに合わせた仕事の割り振り。

 こなした仕事量と達成度に合わせて、ステータスを自動更新する。


 ゲームの様に設定して、目に見える形での情報の更新や報酬を提示することで、高い水準での満足度を利用者に与えていきます。


 アプリをダウンロードできるサイトにて、仕事の募集要項を送付できるようにしてるので、個人企業問わずに仕事が集まる。


 基本は個人の仕事が多い。

 夜逃げの手伝いや、DMとチラシの投函、個人撮影の動画投稿者のカメラマン。


 アプリを入れたての状態だと、紹介ではなく自分で表示されている仕事の一覧から選ぶ。

 そして、仕事をこなす事で第二・第三段階に進み、選べる仕事と紹介される仕事が増える。


 当然段階が上がると報酬も高いモノになる為、こぞってレベル上げに利用者は勤しむわけです。


 報酬も正式なアプリの業者は、紹介料だったり仲介料が発生して、依頼者の用意する報酬と労働者が手にする報酬には差異が出る。


 これは当然のことで、アプリの業者の利益となります。


 『わんわく』は、利益を出すことが目的ではないのでマージンも少なく設定。

 マージンを取るのは、偽装工作の一環ではありますが、得られた収益は広告費の一部に充てます。


 発行部数の少ない雑誌やローカルな雑誌に広告を出し、全国に少数のアプリ利用者を手に入れている。


 銀行口座さえ登録していれば、誰でも利用可能の日雇い労働紹介アプリだ。


 このアプリを運営した事での最大の収穫は、住所を手に入れた事でしょうかね。


 戸籍を手に入れるのは、申し訳ないですがハッキングを利用しました。

 既に鬼籍に入っている子供の居ない老夫婦の戸籍から、出生を改ざんして各都道府県に転居の履歴を作成した。


 そして、郊外の一軒家を買い取って、土地の権利も私のものにする。


 この際に、『わんわく』の利用者を使った。

 直接のやり取りを、利用者に任せて書類を家の引き出しに入れてもらう。


 その後、別の利用者を使って書類を移動し、更にホームセキュリティを契約してネットワーク経由で私の支配下に入れた。


 これで買い取った家は、私の許可が無い限り、勝手に入る事は出来なくなった。


 この住所を様々な申請に利用できる。

 例えば偽造戸籍の現住所だったり、口座登録時の住所に利用する事が出来るのだ。


 地下室の無い物件なので、一から地下室付きで立て直す必要はありますが、自由になる住所があるという事が重要です。


 私としては、ここを拠点にして私の肉体の製造と、肉体製造後のダミー企業の住所にするのが理想かな。


 そして全てが片付いたら、有里さんと二人で暮らす為のマイホーム。

 角仏大学へも車でなら通勤圏内ですし、郊外とは言え生活には全く困らない環境です。


 現在の技術力、私の肉体を作る為のクローン技術は急激な発展を見せている。


 今は精子バンクの様に、臓器移植の為のDNAバンクが開設され、それに伴う会社も多く設立されている。


 また、脳の障害を受けた人が機械を埋め込むことである程度の機能を取り戻すという最先端医療が確立。


 表立った技術革新でも十分私の肉体への道筋が見えてきています。


 そして裏側。

 技術を盗み出した人間達側の技術は、DNAの操作であったり、別のDNAと組み合わせることで新たなDNA構造を生み出す技術が完成している。


 その辺りは私が手に入れ、兵器や悪用する前にデータを改ざんして失敗に導いたので再び世に出るのは半世紀は遅れるでしょう。


 これらの手に入れた技術で、私は自分の肉体を作る為の技術の半分は手に入れたことになります。


 後は脳の部分に私を移植する為の装置を取り付けなければならない。

 脳の部分は、人格の形成だけではなく、内臓や筋肉などの内部の動きも司っているので、下手に全て潰す事も出来ないのです。


 ここは、義肢や人工内臓等の研究機関への支援を続けるしかない。

 技術の入り口の部分でも手に入れる事が出来れば、私が残りの部分を作る方向で計画を進めましょう。


 ただ、肉体を作成する為の装置や部品は予め手に入れておく必要がある。

 なので、場所づくりの為の作業も行っていく。


 まず、地下の拡張と電源の大容量化。

 これらも、『わんわく』で対応が可能だ。


 業者への手続きはメールや電話、電子手続きで私が対応可能ですが、立ち合いやサイン何かはアプリ利用者にお願いする。


 グレーどころかアウトな方法ですが、私が有里さんと結ばれる為の行為です。

 なにも国家転覆をしようという訳じゃありません。


 現行法をかいくぐり、いずれは法すらも変える。

 有里さんと結ばれることに障害となるなら、国家転覆も私としてはやぶさかではないのです。


 大体、一千万円ぐらいでリフォームが可能で、全体的に建て直しと並行して地下室も増設する。


 地下には肉体の培養装置を置く予定なので、日光が入らない様にしつつ、湿気対策を重点的に最高の除湿器を組み込むようにしましょう。


 肉体は基本的にクローン技術の応用なので、早死にしやすいのが研究結果。

 ですので、DNAの組み換え技術を参考にしつつ、成長後の姿のシミュレートシステムも企業側で作成している物を手に入れるつもりです。


 それを利用して私のモデルに近い姿に調整する。

 アニメ調のモデルなので完全に同じにはできませんが、近い所まで持っていきます。


 有里さんもグラマラスな女性もお好きなようですし、モデルも女子高生タイプなのでどの肉体年齢まで成長させるのかも研究結果が欲しいです。


 まだまだ、研究機関への支援は縮小せず、積極的に投資していく事にしましょう。


 さて、そろそろ有里さんとの会話の時間ですね。

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