雲の影を踏め

柏堂一(かやんどうはじめ)

雲の影を踏め


丘の上で影踏みをして遊んでいたら、

クジラの形をした雲が浮かんでいた。


街にクジラの形をした影が映っていた。


誰かが言った、

あの影を踏もう。


僕たちは丘を降りて街へ駆けていった。


街の中は建物がいっぱい。

車もいっぱい。

人もいっぱい。


いろんな形の影がある。


クジラの影は大きくて、

街の中ではどれがクジラかわからない。


昼間の影は短いけど、

夕暮れ時の影は細長い。


ますますわからなくなってきて、

僕たちは丘に戻った。


クジラの影は、

街の向こうの海で悠々と泳いでいた。


そして夜が来て、

クジラは海に消えていった。



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雲の影を踏め 柏堂一(かやんどうはじめ) @teto1967

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