第7話
宇宙船が大気圏を突破しようとし、四人には大変なGが掛かってくる。
大地達三人は早々に気を失い、女性も耐え切れず意識を失ってしまった。
ここはどこだろうか。何かの研究所? 白衣を着た人たちが通路を行きかい、左右の部屋は大きなガラスがはめられて、中の様子が良く見える。
画面を見入る者、何かを操作する者、薬を調合する者、色々な実験をしているようだ。
ある部屋の前で立ち止まり、白い自動ドアが左右に開くと、プシュッと空気が流れる音がする。部屋の中は少し気圧が高い様だ。
目の前にはメガネをかけ、白衣を着た男性がイスに座って資料を見ていたが、誰かが入ってきたのをで顔を上げた。
(やぁ久しぶりだね。元気だったかい)
顔を縦に振って答える。
(おーい、来てくれたよ、こっちにおいでー)
メガネの男性が誰かを呼ぶと、隣の部屋から白衣の女性が赤ん坊を抱っこして現れた。
その隣には小さな男の子がいる。
(あらあら、見て可愛いでしょ? 穂花っていうのよ)
女性は赤ん坊をよく見えるように差し出すと、指を出して頬をつつく。すると赤ん坊は指を握ってきた。
(ふふ、力強いでしょう? こんな小さいのに私達と同じなのよ? 人間って凄いわね)
握られた指をゆっくり上下に動かすと、赤ん坊は声を上げて喜んでいる。
(キミの事が気に入ったようだね。この子と大地の事、よろしく頼むよ)
騒がしい音が聞こえ、女性がゆっくりと目を開ける。
『警告 警告 接近する物体多数 至急迎撃 もしくは 回避行動を取ってください』
警告音と共に人工音声で現状が報告されると、女性は慌てて外を見る。
外には自分たちの宇宙船よりもさらに小さい戦闘機タイプが集まってきており、今まさに攻撃しようとしている。
「起きなさい! ほらガキンチョ共! 起きろって言ってんのよ!!」
操作レバーを手に取り、レーダーや報告画面を見ながら3人を起こす。
「まだ眠いよ・・・穂花あと五分」
大地は思いっきり寝ぼけているようだ。
「えっと、今日の授業はっと」
タカシも寝ぼけている。それにしても真面目だ。
「おかーちゃん、今日の晩御飯はカレーがいい……」
セキは幸せな夢を見ているようだ。
しかし今はそれどころでは無い。だが3人を一気に目覚めさせる方法なんてない。
「3人とも! 授業中に居眠りなんていい度胸ね!!!」
「ごめんなさい先生!」
「ち、違うんです先生寝てません!」
「え? 給食の時間?」
……一気に目が覚めた三人は、女性から報告を受ける。
「今私達は戦闘機に狙われているわ。何とか目的の宇宙船に接近するから、アナタ達
はハッチの近くで待機していなさい!」
「で、でもお姉さんはどうするの?」
「私もあいつらを倒したらハッチに行くわ!」
大地が心配しているが、女性には勝ち目が見えているのだろうか。はた目には絶体絶命にしか見えないが……。
「さあ早く移動して!」
「「「は、はい!」」」
慌ててベルトを外して走っていく。無重力空間かと思ったか、どうやら人口重力が働いているようで、三人は床を走っていく。
「さてと、まずはレーダーに映らないようにして、それから目視を攪乱して、あ、ロケットエンジンの炎も消さないとね」
言っている意味は分かるが、それをまとめて出来るのだろうか。
「えーっと? 確かこのタイプは……あった、よし、行くわよ!」
女性がパネルを操作すると、宇宙船が薄い光の球体に包まれる。
しかし球体は直ぐに見えなくなり、宇宙船は宇宙に溶けるように黒くなっていく。
エンジンの炎だけが見えていたが、エンジンを止めたのか、炎も見えなくなる。
姿が見えなくなって焦ったのか、小型戦闘機はあちこちを攻撃し始めた。しかしそんな攻撃が当たるはずもなく、宇宙船はレーダーを最大値にして目的の物を探し始める。
「あった! これが地球から上がってきた船ね」
レーダーにはひと際大きな物体が映っている。
大きな物体の方を見ると、ガラス面に拡大された映像が映し出され、何度も倍率を変えてようやく物体を確認する事ができた。
「距離三十六万キロメートル……そろそろ月軌道じゃない。図体の割に早いわね!」
女性がレバーを入れると宇宙船はそちらにかじを取るため、エンジンが炎を吐きだす。
それをみた小型戦闘機から一斉に攻撃を受けるが、距離感が掴めないため命中しない。
「ふふん、宇宙では距離感が掴めないからね、炎だけじゃ遠いのか近いのかも分からないでしょ! ヘタな鉄砲は数を撃っても当たらないわよ!」
ガゴン!
何かが船体をかすめた。
「きゃぁ!? ウソウソ! ヘタじゃないから! でも上手くも無いから当たらないけど!」
必死に
『お姉さん! 今の何!? なんかすげー揺れたけど!』
大地達だった。
「あなた達!? よく操作方法が分かったわね」
『タカシがさ、画面を触ったら電気が付いた』
「そ、そう。大丈夫よ、今逃げてる所だけど、アイツらの攻撃なんて当たりっこ無いんだから」
そう言いながらも船体は激しく揺れ、あちこちから爆発音がしている。
『ほ、本当に大丈夫ですか?』
「大丈夫大丈夫! 安心して待ってなさい。あ、念のために何かに掴まってて」
そういうと、大地とタカシはセキにしがみ付く。
そしてセキは手すりにつかまった。
「もう少しかかるから、おとなしく待ってなさい!」
『はーい』
と声を揃えて返事をする。
サイドパネルが消えると、女性はとても焦り始めた。
「やっば! 集中が解けたから船体がむき出しになっちゃった!!!」
真っ黒になっていた宇宙船はその姿を現し、敵戦闘機に姿をさらし出していた。
一応バリアーは出ているが、連続して攻撃を食らえばバリアーは消えてしまう。
「仕方がないわね、燃料を節約なんていってる場合じゃない!」
幾つかのレバーを操作し、スイッチを入れる。
すると人工音声がカウントダウンを始めた。
『ハイパージャンプまで5、4、3、2、1、ジャンプします』
宇宙船は横に引き伸ばされたように長くなり、一瞬で短くなったかと思うと細かな光と共に、その姿は無くなっていた。
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