シーグラス

へりぶち

ワンドロ

とにかく自分の容姿に自信がなかった。

なので自分の容姿でも通用する価値観の国を探そうと思った。


そうして思い立ったが吉日と家族と数少ない友人に自分探しの旅に出ると言い残し外国へと飛び立った。


しかしとち狂った不死の研究をしているという機関に誘拐され、あれよあれよという間にガラス瓶に人格を移された。


何を言っているか分からないと思うが私も分からない。

なんなら私をガラス瓶に人格を移した研究員達も「俺ら何やってんだろうなぁ」と瓶になった私を見て不思議そうに小首を傾げていた。


そうして大迷惑な深夜のテンションでガラス瓶にされた私は猛抗議しようとしたが、ガラス瓶如きにできるアクションは何もなかった。


それから私は何年か花瓶としてこの施設にいたわけだが、ある日気が触れた研究員が暴れ回ったため施設が大爆発し私もその余波を受け海へと飛んでいった。


私は海に揺られたり、溺れたり、沈んだり、割れたりした。

そうしてどこかの海辺に着く頃には私は小さくなり四隅は削れ、鈍く輝くシーグラスになった。


「わぁ、素敵なシーグラス!」

そうして私をひょいと拾い上げた女性はたいそう美しかった。


素敵ですか、そうですか。

では私と付き合ってくださいますか?

シーグラスの身ではありますが。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

シーグラス へりぶち @HeriBuchi1

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る