2021-03-21

人間関係がここまで心を蝕むのは、何とも怖いことだ。


貴方と居たこのいっときは、どうやら楽しいものだった。

もちろん、嫌だと思うことも辛いと思うことも沢山あった。

それだが、どういう訳か、離れてみると寂しさばかりが募る。

貴方が「居ること」で、ただそれだけで大幅に緩和されるものがあったのだ。


人間関係を否定するようなスタンスをとっておきながら、

余りに粗末な為体だ。

誰に対しても、最早合わせる顔が無いだろう。

それでも、最近は楽しいものだった。

音に対する悩みも随分と減った。

余計なことを考える時間も減った。

そう、こんな余計なことを考える時間のことだ。


貴方は強かった。

今自分のいる位置を、スタンスを、大きな根拠を持って雄弁に語った。

成りたいものも分からず、ふらついている俺とは大違いだ。

貴方は、人間に頼った思想を構築することなど無い。

己の重要視せん事を、はっきりと解って居て、

言葉にする事ができる。

薄々思っていることだが、俺では貴方には釣り合わない。

貴方の人生に、俺は邪魔だ。

本来歩んだであろう道から、逸脱させて仕舞いかねない。


それでも、共に居て少しでも楽しいと思ったのだ。

俺の探すべき月明かりが浮かぶはずの夜空には、

最早重たげな暗雲が立ち込めるばかり。

月明かりなど、欠片も見えやしない。

虚構と借りもので作られたこの眼では、

その透き通った光を捉えられやしない。

結局、貴方が大切だった。

手放せやしないと思って仕舞った。

一度いなくなれば、こんなにも苦しい。


折角独りで在ることに慣れ始めていたというのに、

貴方は何て罪深い人なんだ。

弱かった俺は、さらにどうしようもなく弱い人間に成った。

それでも、俺の思想は、目指すところは、変えたく無い。

俺は、この人生をかけて、月明かりを探すのだ。

決して人間に依らないところに、綺麗なものが有るはずだ。

見つけられなくてもいい。

探す事が重要なんだ。


家に帰ればまた独り。

せきをしたって独りだ。

詰まらぬ日常に戻されそれで終い。

俺は弱い。

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