背中合わせの恋人

心月みこと

プロローグ

 僕は生きる理由を探していた。


 目立った長所も短所もないそれだけに周囲からは認識すらされてないのでないかと、心配になる。


 テレビのニュースで報道される死者を知り涙を流す人がほとんどいないように、僕も誰からも知られずに息絶えていくのだろう。




 大抵の人はその類なのだから仕方ないと割り切る事は容易に出来る。だからこそ、せめて自分の生きた理由くらいは見つけておきたいのだが、人から好かれたくも嫌われたくもない僕の思想が、求めている答えを隅へと追いやってしまう。




 僕は弱くてヘタレだから一人じゃ答えには辿り着けないだろう。生きる理由を見つける事、それは僕自身が変わることにも直結するだろう。


 一人で変われるのならばよかったかも知れない。それに二人なら変われるなんて程、人間は単純じゃない。




 きっと君だから、君だったから僕は変わり始めていったんだ。多分、君への感謝は一生消えないだろう。


 だからこそ、言葉にしたかった。するはずだった。それなのに…。




 今の僕ならきっと言葉にできる。でも、今の君に僕の声が届く事はきっとないのだろう…。


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