はきだし。(嘔吐表現注意)

「気持ち悪…」


真っ暗な部屋に灯るオレンジ色の光。土色が混ざった危険信号が白の陶器を汚す。パタパタと何かが滴る音。せっかく腹の底から違和感を吐き出したのに口の中には酸っぱさだけが残って不快だ。

こうなってどれだけの日が経っただろう。最初は吐きそうなだけだったはずなのに。いつしか本当に私は吐いていた。

最初は月に一回程度。でもだんだん増えて、隔週になって、週一になって、毎日になって。頻度が増えるのは推しの動画投稿だけでいいのに。


「めんどくさ…」


起き抜けに吐いてシーツを汚さないだけまだましだと思う。トイレだけで済ませられるから。最近はトイレに芳香剤も置いていい感じ。あとは吐かなくなればいいだけなんだけど。


「はぁ…」


ため息にも酸っぱさが混じる。追い吐きをしそうになったけど何とか止めた。

なんで私がこんな思いをしなきゃいけないんだろう。私が何をしたんだろう。何故こんな辛い思いをしているんだろう。私はただ生きているだけなのに。両親に相談しても「生きてる証拠よ」だなんて言ってくる。スーパーポジティブを娘に引き継げないのなら黙っててほしい。うるさいから。最悪。


トイレの窓からカラスが鳴く声が聞こえる。空はわずかに明るさを取り戻している。

また、私の嫌いな一日が始まる。



(暗転)

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