「いってらっしゃい」

扉が閉まる音がするまで待ってから、戸棚を開く。そこには大きな瓶がひとつ。

瓶を軽く揺さぶってやると、白い粒がじゃらじゃらと騒ぎ立てる。

私は少なからず高揚感を覚えた。

今からこいつらが、空っぽな私を埋めてくれるのだ。


これだけ集めるのにどれだけの金と労力を使ったことか、これを隠し続けるのにどれだけ精神をすり減らしたことか。

もうその努力もしなくて済む。


薬は使い方を間違えると毒になるという。


私は間違っていない。


私は、苦しい私を救うために、薬を飲むだけだ。



お大事に。

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