Ⅱ. 博物館・美術館編
「おいしい鉄の作り方・たたら編」―和鋼博物館(島根県)
島根県
同市内には出雲地方に特徴的な四隅突出型墳丘墓が存在し、東部出雲王朝があったと考えられています。『古事記』『日本書紀』で
カーナビに従い安来市役所の前を通って港へ向かうと、特徴的な屋根が見えてきます。ジブリ映画『もののけ姫』で登場した「タタラ場」のモデルとなった、
博物館自体は、刃物市などのモヨウシがない限り(山陰の観光施設のご多聞にもれず)たいてい閑散としているのですがね(^◇^;)
ガラス張りのエントランスに入ると、高さ三メートルはある
◇
弥生時代、本邦では主として朝鮮半島南部でつくられた
和鋼博物館は、弥生時代後期~明治時代初頭まで中国地方で行われた「たたら製鉄法」に関する展示を行っています。
「たたら」の語源には諸説あり、製鉄を発明したヒッタイトから技術を伝えたトルコ系部族「タタール」に由来するなどと言われますが、よく分っていません。『日本書紀』(七二〇年成立)に『
「たたら製鉄法」の原料は砂鉄と木炭です。砂鉄には磁鉄鉱を多く含む
「
ところで、私はさっきから簡単に「銑鉄」だの「和鋼」だのと書いていますが、ちゃんと定義があります。
鉄は、含まれる炭素Cの量によって性質が変化します。冶金学では炭素量0.02%以下を「鉄」、1.7%以上を「
炭素量1.0〜1.5%の1級
伝統的なたたら製鉄法で得られる鉄産物を、西洋式製鉄法に対し「和鉄」と呼ぶことがあります。銑を「
◇◇
中国山地、特に出雲地方では良質な真砂砂鉄が採れ、江戸時代後半には国内の鉄鋼の約八割を生産していました。山で
砂鉄を多く含む(0.5~2.0%)花崗岩の採石場を
たたら製鉄では、炉のなかに砂鉄と炭を交互に入れて鉄を還元させます。一回のたたら操業で必要な炭の量は一〇〜一三トン、森林面積で一ヘクタールほどです。ナラ、クヌギなどの樹齢三〇〜五〇年程度の雑木を、完全に炭化しない程度に焼いて使いました。江戸時代後期には年間六〇回ほど操業したため、たたら一箇所当たり一八〇〇〜三〇〇〇ヘクタールの森林が必要でした。
江戸時代、松江藩から保護をうけた
築炉は、もっとも重要な作業です。「一釜、二土、三
湿気を防ぎ熱を逃がさない特殊な構造の炉は、十五世紀頃から造られ、十八世紀に現在の形となりました。本床と小舟(地下構造)を造り、本床の甲(天井)をたたき締め、真砂土と粘土を練った土で元釜という土台部分を築き、その上に中釜・上釜を築きます。長さ三メートル、幅一メートル、高さ一. 二メートル、壁の厚さは下ほど厚く四〇センチメートル程になります。この炉と天秤
古代の製鉄では、風通しのよい山の中腹などに小型の炉を設置し、自然風を利用していました。炉が大きくなるにつれ、炉の温度を上げるための装置が必要になり、
『日本書紀』に
『倭名類聚抄』(九三四年)では
大きな木から真っすぐな板を削り出す大鋸や台
出雲地方の記録では、天秤吹子の考案は元禄四年(一六九一年)とされています。一人踏と二人踏があり、明治期にほぼ一人踏となりました。炉の左右に二台接続すればよく、番子を省力できました。二人の番子が交代で踏むことから「替わり番子」の語が産まれたと言われています。明治時代に水車吹子が現れるまで使われていました。
◇◇
和鋼博物館には、前述した天秤吹子、安来市荒島町の大成古墳(四世紀)から出土した『
たたら操業の様子、日本刀鍛造の動画などが上映されていて、日本刀を持つことも出来ます。
和鋼博物館の南方、島根県奥出雲町大呂に(財)日本美術刀剣保存協会が一九七七年に復元した「
「鉧押し法」は三昼夜、七十時間におよぶ作業です。出雲地方では工程を「こもり」(約七. 五時間)→「こもり次」(約七. 五時間)→「のぼり」(約十八時間)→「くだり」(約三六時間)と呼んでいます。こもり期は炉内の温度が低いため、還元しやすく溶けやすい砂鉄(こもり砂鉄)を入れます。その後、砂鉄と木炭を三十分おきに炉に入れ、ノロ(
炉外へ取り出した鉧は、
「
一五〇〇度を超える炉内をホド穴から覗きこみ、炎の色や高さを見据えながらノロを出す量を調節し、砂鉄の焼ける音を聞いて工程を決める村下の技は、現在も継承されています。
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和鋼博物館の入館料は、中学生以下は無料、高校生210円(団体150円)、一般310円(団体260円)です。『金屋子神話民俗館』との共通券なら、中学生以下は無料、高校生310円、一般520円です。水曜日は休館です。
館内には図書室とレストランがあり、ヤスキハガネの包丁、砥石などを販売する売店もあります。
和鋼博物館|鉄の歴史ミュージアム HP:http://www.wakou-museum.gr.jp/#home
参考図書:
「和鋼博物館へのご案内」和鋼博物館・編集 / 発行
「和鋼スポット解説 No.1~No.11」和鋼博物館・編集
「鉄のまほろば―山陰 たたらの里を訪ねて」山陰中央新報社・編 / 発行
「出雲国風土記(全訳注)」荻原 千鶴(講談社学術文庫)
「日本海を望む「倭の国邑」―妻木晩田遺跡」濵田 竜彦(新泉社)
「出雲王と四隅突出型墳丘墓 西谷墳墓群」渡辺 貞幸(新泉社)
「邪馬台国時代のクニの都―吉野ヶ里遺跡」七田 忠昭(新泉社)
「弥生時代の歴史」藤尾 慎一郎(講談社現代新書)
「古代の鉄と神々」真弓 常忠(ちくま学芸文庫)
「人はどのように鉄を作ってきたか 4000年の歴史と製鉄の原理」永田 和宏(講談社ブルーバックス)
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