第694話 言質を取って……、戦闘開始!
突如として登場した三体の魔物が残り百四十九体のゴーレムの前へと立ち塞がる。
その異様な光景を睨みつけるのは黒地に金をあしらったローブ……、つまり東方魔聖教会連合のローブを纏った男。先ほどまでの恍惚とした表情は忘却の彼方に置き忘れてきたらしい。
「我々のゴーレムを破壊したということは我々とは敵対しているということでしょうね……。見たところ強力な従魔といったところでしょうか……?王家に我々の行動が見抜かれていた……?それともこの森での行動が別の何かを怒らせたか……?」
そう呟きつつ男はゴーレム軍団を挟んだその先にいる三体の魔物……、ロビン、フィン、ファーマーさんを凝視する。男の勘違いでなければ炎を吐き雷光を纏うアンデッドの馬に跨っている
極めて高位の魔物には人族や亜人の言葉を理解する種が存在する。このこと自体はこの世界である程度の学問を修めれば知っている程度の知識だ。そしてその教えには続きがある。その教え曰く『人族や亜人の言語を解する魔物に遭遇したのであれば、その魔物の縄張りに侵入した可能性が高い。潔く謝罪し魔物に敬意を払いつつ立ち去るための許しを請うべし』と。
そんな過去の教えを思い出した男は考える。『こんな高位な魔物、ルガリア王家が従えることなどできるはずがない』と。そしてニヤリとした余裕のある笑みを取り戻すと……、
「この森を治める高位の魔物とお見受けします。我等にこの森を荒らす意図も王都へ侵攻の意図もございません。ただ森を抜けた先にある王都に赴きたいだけでございます」
そう言ってのけた。その態度にはどこかロビンたちを見下した様子が見て取れる。この辺りを治めた気になっている所詮は言語を解するだけの単純な魔物と考えているのか……。その様子に、
「ほう……、王都へ侵攻する意図はないと申すか。ではその要件というのを聞いておこう」
なぜかロビンが話に乗る。漆黒のスケルトンモードのフィンとエルダーリッチモードのファーマーさんが少し呆れたような気配を出すが気にした様子も見せないロビン。
「王都で開催されている夏祭りはご存じですか?友人がゴーレムの披露をしますので、その応援に向かうのです」
ニヤリとした気持ちの悪い笑みを絶やすことなくそう答える男。
「ふむ……、そうであるか……」
納得したような反応を見せるロビン。このとき、
『ティジェス侯爵家と繋がっていることの言質はとれたということにしようか……』
『あのロビン殿が言質を取るとは……。二千年前であればそのような対応はファーマー殿に任せていたと……』
『魔物も成長でぎるどいうごどだね』
そんな念話が繰り広げられていることは秘密である。そんなことなど知る由もない東方魔聖教会連合のローブを纏った男が我が意を得たといったように顔を歪ませさらに気味の悪い笑みを浮かべた瞬間、
「それはすまなかった。てっきり二千年前に完全に滅ぼされ復活など絶対にありえない愚かすぎる魔王を信奉しているくだらない残党の一団ではないかと勘違いしてしまったのだ。それについて謝罪しよう」
「なっ!?」
ロビンによる挑発要素てんこ盛りの煽り発言に一瞬固まったのち、男がその表情を一変させる。
「おお!そなたも知っているか!二千年前の大戦時、人族でありながら魔王軍に与して悪逆の限りを尽くした組織!その結果、『破滅の魔女』や『鉄塊の女王』からの怒りを買い破滅に追いやられたという愚かな魔王に付き従った愚かな者たちの残党よ」
「何者です……、なぜそれを……、我々の最高機密を……、なぜ……、なぜ知っている……」
さらなる煽り文句に先ほどの様子とは打って変わって振るえ始めたその全身を抱きしめるようにしながらそう呟く男。
「なぜと問われて素直に答える者がいるかどうか……」
適当にといった様子で答えるロビン。
「なぜ知っているのかと聞いているのだぁ!」
ロビンの口調が癪に障ったのか男の絶叫と共にどこからか取り出した杖を振る男、その動きに同調するあのようにゴーレム達の内部から風の魔力が沸き上がる。
「ふん。貴様らの正体などすでに露見している。東方魔聖教会連合の残党よ!二千年前の魔王は滅びた!復活など絶対にありえない!ここでゴーレム達を停止させその身をルガリア王受けに差し出せば命だけはなんとかなると聞いている!だから貴様に一度だけ告げる!投降しろ!」
その言葉に歯を食いしばり怒りをあらわにする男。
「お前たちはルガリア王家が使役する魔物か!?だが言語を解するといっても所詮はルガリア王家が飼う従魔。我々のゴーレムの前には無力なはず!そう算出されたはずなのだ!ゴーレムども!あの三匹を殲滅……」
東方魔聖教会連合のローブを纏った男はそこから先の台詞を言うことができなかった。
彼の眼前ではアンデッドの馬を駆り大剣で高さ五メートル近くあるゴーレムを次々と真っ二つに切り伏せる
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