第549話 出立、青空の下
「ジョーナス第三王子をお迎えする準備を整えて待っています。神聖帝国ミュロンド……、バルトロス教は油断ならない存在ですが皆さんであれば任務を成し遂げることができると信じています。道中お気をつけて」
晴れ渡った早朝、雲ひとつない青空の下、ここはマルトンの砦にある東門、居並ぶ騎士たちと共に笑顔でそう言ってくるのはフレデリック=バウマン。バウマン辺境領の領主その人である。ルガリア王国において辺境伯は侯爵と同格であり高位貴族ということになるのだがこの人物は相手が誰であっても丁寧な物腰を崩さない。
『きっと普段は温厚だけど、貴族の暗闘で敵に回すとヤバい系の人な感じがする』
きちんと話をしたのはこの数日ではあるがミナトはそんな印象を持っていた。
「バウマン様、ご助力頂き感謝申し上げます!よし!出立!」
カーラ=ベオーザの号令でミナトたちやA級冒険者のティーニュ含むウッドヴィル公爵家の一行は出発する。
ミナトたちがアンデッド騎士団改め
デボラたちを王都へ帰し、帰還したミナト(と外套のピエール)、シャーロット、デボラ、ミオはバルトロス教の神殿騎士ブランディルによって『不死者達の霊廟』の封印が解かれようとしたことをバウマン辺境伯へと報告した。
ブランディルが連れていた女性騎士が人族や亜人の肉体と魂を供物とすることで行使可能な禁呪である解呪の魔法を使うための
さらにその解呪の魔法で一部の封印が解け瘴気が『不死者達の霊廟』の周囲一帯に瘴気が立ち込めたが、その瘴気に飲まれて神殿騎士ブランディルも
「そうですか……、『不死者達の霊廟』に何かが封じられていることは分かっても二千年前のクラレンツ山脈が瘴気の立ち込めるアンデッドの巣窟であったことはルガリア王国でもごく一部の者しか知り得ない情報です。おそらく瘴気などへの対応は考えていなかったのでしょう。愚かなことを……。ですがクラレンツ山脈からこの砦に魔物が向かってきた理由はその神殿騎士が封印を解こうとした行為が原因と見て間違いなさそうですね」
ミナトの報告にそう返したバウマン辺境伯は騎士にクラレンツ山脈内の調査を命じ、近隣で活動している冒険者にも依頼を出した。ミナトの報告内容とクラレンツ山脈が元の状態に戻っているかの確認をするためである。
調査は二日間行われた。その結果、まだ継続してクラレンツ山脈内の魔物に動向は調査するらしいが、一旦の脅威は去ったということになりウッドヴィル家一行の出立が決まったのである。
ちなみに『不死者達の霊廟』は中が空のままシャーロットによる強力な封印が施されてた。フィンたちに確認すると、
「新タナ主君デアル魔王様ノ居城ガ私タチノ居場所デアル」
ということで今は王都の東にある大森林の最奥部、ミナトのお城で暮らすこととなった。
「魔王じゃないんだけどね……」
ミナトが力無くそう呟いたのも秘密である。
「クラレンツ山脈を抜ければ神聖帝国ミュロンドか……、何が待ち受けているかな……」
「ミナト!何があっても私たちはミナトと共にあるわ!」
「うむ。我はマスターに付き従うまでだ!」
「ん!ボクも!マスターとずっと一緒!」
「ワタシもデス〜」
心強い美女たちの言葉にミナトは笑顔で青空と朝日に照らされるクラレンツ山脈を見上げるのであった。
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