第404話 余計なことは考えずに素材を……

「え、えっと……、住居のことは皆に任せているから大丈夫として……、今日はミスリル鉱石とオリハルコンを貰いに来たんだよね。高品質のものってあるかな?」


 とりあえず魔改造されているかもしれない新しい家のことを記憶の彼方に追い払ったミナトは改めてアースドラゴンの里に来た本来の目的のため問いかける。


「はい~。もちろん最高品質のものがございますよ~。ただ~、ご存じのように~、アダマンタイトも含めまして~、マスターのお住まいで使用されるとのことで、先日、大量に搬出したのです~。ですので大量にご用意とまではいかないのですが~」


 ゆったりした口調なのだがミナトにとってなかなかに衝撃的な内容である。背景にガラスに走るヒビのようなものが音を立てて入ったのは気のせいだろうか……。それにしても最高品質のミスリル鉱石とアダマンタイトとオリハルコンを大量に使用する我が家とは……、などということは考えないことにして、引き攣りそうになる顔の筋肉を必死に宥めつつ、努めて笑顔で、


「そ、そこまで大量じゃなくても大丈夫かな~?そ、倉庫に案内シテモラエマス……?」


 何とかそこまで言い切った。そんミナトの様子に少しだけ首をひねりながらも、


「ご案内します~」


 笑顔でミナトを倉庫へと案内するアースドラゴンさんであった。


「こちらが地上の人族や亜人の技術でも純度百パーセントの精錬が可能となる最高品質のミスリル鉱石ですね~。そしてこちらが最高品質のオリハルコン鉱石です~。オリハルコンの完璧な精錬は地上の技術では不可能だと思われます~。わたくしが精錬をしましょうか~?」


「ああ。お願いしたい。量としては小型の魔道具を八個造ることを想定した量にしてもらえるかな?」


 そう返すミナト。


『なんでだろ……、指輪って言うのがちょっと恥ずかしい……』


 心中での呟きは外には漏れることもなく、


「畏まりました~。ではミスリル鉱石はこれくらいですね~。オリハルコンをご用意しますのでこちらで少々お待ちください~」


 アースドラゴンさんがミスリル鉱石を見繕い、オリハルコンの鉱石を持って倉庫横に併設された精錬所らしき建物へと消えていく。


「これで素材を揃えることはできたのかな……」


 そう呟く。グドーバルはミナトが依頼する指輪に関して、台座を用いずにリング部分にこの世にある深く青い輝石ブルー・ブルー・プラネットを埋め込むためにはクリスタルゴーレムの魔石かオリハルコンが必要だと言っていた。そしてクリスタルゴーレムの魔石はオリハルコンの代用だと……。


『贈り物だし品質は良い方がいいものね。だとしたらオリハルコン一択なんだけど、グドーバルさんってオリハルコンを扱ったことがないみたいなことを言っていたっけ……。試作用にクリスタルゴーレムの魔石もあった方がいい……?アースドラゴンさんに聞けばクリスタルゴーレムが出現する階層を教えてくれるかな……?』


 そんなことを考えるミナト。『地のダンジョン』は第百二十階層からなるダンジョンだ。各層で貴重な鉱石やゴーレムが出現するという。


『よし。期限は二週間後とはいえまだ初日だし、クリスタルゴーレムの魔石も獲っていこう!』


 ミナトがそう決断してところで、


「お待たせしました~。こちらが最高品質のオリハルコンです~」


 穏やかな言葉と共にミナトの前に金色に輝く金属のインゴットが置かれる。ミナトも初めて見る美しい輝きの金属だ。


「これがオリハルコン……、これも実にファンタジー……」


 そう呟くミナト。これで素材が手に入った。ドラゴンを探すRPGで貴重なアイテムを入手した時のサウンドが頭の中に流れるミナトであった。

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