第385話 みんなまとめて紹介します

 デボラ、ミオ、ナタリア、オリヴィアの言っていた古の盟約とはシャーロットが行使した史上最悪の隷属魔法とされる想起される永遠不滅の契約エターナル・コンタクトであった。また新しい歴史の真実に触れてしまったミナトである。


『こんなこと知っている人族っておれくらいなんだろうな……。また歴史の裏側を知ってしまった……、それはいいとしても首無し騎士デュラハンさんを紹介してもらっただけで、まだきちんと話をしていない気がする……?あれ……?けどその前に何かシャーロットに聞かないといけないことがあったような……』


 ミナトがそんなことを考えていると、


「シャーロット様。吾輩、アースドラゴンのおさ殿がナタリアという名前を得られていることに驚いております。何やら凄まじい存在になられているようで……。まさかアースドラゴン殿達がシャーロット様の眷属に?破滅願望を求められた?


「何ですって!?」


 首無し騎士デュラハンの言葉にシャーロットが静かにそう返す。だがその目は笑っていない。伝説の水魔法である日照りの街シシタス・ウルプスを発動した時と同じ沈んだ目をしてるのがちょっと怖い。その様子に作り物デコイの魔法で造られた表情が恐怖に引き攣る。どうやら表情だけではなく顔色も悪くする機能も付いているらしい。非常に工夫された魔法だと感心するミナト。


「あなた……、発声ができるようになってからいきなり饒舌になったわね……。まあいいけど……、それでアースドラゴンだけど私の眷属じゃない!彼女はミナトの眷属よ!」


 シャーロットがミナトを指し示す。


「ミナト!折角だから皆を喚んであげて!まとめて紹介した方が話が早いわ。そろそろギルドに紛れ込んだ東方魔聖教会連合の連中もミオによって炙り出されたんじゃない?」


「確かにそのほうがいいよね……」


 ミナトがそう答えて【転移魔法】である眷属転移テレポを発動する。


【転移魔法】眷属転移テレポ

 眷属の獲得という通常とは異なる特異な経緯から獲得された転移魔法。魔法陣を使用することなく眷属を召喚することが可能。当然、送り返すことも可。建造物等がある場合しっかりと避けて召喚・送喚するのでそういった点は心配無用。


「……どうやらまたマスターに喚ばれたようだ」


 そう呟きながら登場したのは真紅のロングヘアーに切れ長の目、抜群のプロポーションを誇るデボラ。


「ん?あれ……?マスターのいたダンジョンに戻ってきた?」


 透き通るような青い瞳と青い髪、透明感と可愛らしさを極限まで高めたかのような容姿をしているミオが言ってくる。


「なるほど、先ほどは驚きましたが眷属転移テレポを受けるとはこのような感覚なのですね」


 そう言うのは先ほどと同様に執事風な装いに白い髪、凛々しいとも表現できる中性的な美しさを湛えた女性、オリヴィアである。


 登場したレッドドラコンの長、ブルードラゴンの長、フェンリル。そして、


 ふよん。


 ミナトの外套マントへの擬態を止めたソフトボールくらいの虹色の球体、エンシェントスライムのピエールもそこに加わってさらに少女の姿になった。


 その光景に言葉を失って立ち尽くす首無し騎士デュラハン。ちなみに首無し騎士デュラハンの種族名ある煉獄の首無し騎士ヘル・デュラハンもかなり高位の魔物だが現時点では、ミナトにテイムされて進化しているデボラたちの方が上を見上げてもどこにいるのかその姿形が小さすぎて見えないくらい遥かに高位の存在であることは間違いない。


『黒髪ロングヘアーの美人が言葉を失っている。呆気にとられるとはまさにこんな感じかな……。ま、しょうがないよね……』


 そんなことをミナトが考えていると、


「改めていまの私の家族を紹介するわ。レッドドラゴンのデボラ、ブルードラゴンのミオ、アースドラゴンのナタリア、フェンリルのオリヴィア、エンシェントスライムのピエールちゃんよ」


 そうして一拍の区切りをつけて、


「そしてこの子たちをテイムし名前を付けた張本人にして私たちのパートナーがこのミナトよ!」


 そんな紹介をされてしまうミナト。すると首無し騎士デュラハンがぷるぷると震え始める。


『だ、大丈夫かな……』


 ちょっと心配になるミナトだが、


「ちなみに私が第一夫人よ!そこは忘れないで!」

「うむ。そして我が第二夫人だ!」

「ん。そうしてボクが第三夫人!」

わたくしが第四夫人ですね~」

「私はマスターの忠実なる僕であり愛人ですね」

「ワタシが二人目の愛人でス~」


 そんな首無し騎士デュラハンの様子などお構いなしに自分たちの立場を紹介するシャーロットたち。そこにシャーロットが畳みかける。


「ミナトはスゴイのよ?ピエールちゃんは違うけど、私は魔王の支配から切り離すことが目的だったとはいえ想起される永遠不滅の契約エターナル・コンタクトをデボラ、ミオ、ナタリア、オリヴィアにはかけていた。あの魔法を解除することは私にも簡単じゃないからその効果は今も続いている。それなのにミナトは彼女たち全員をテイムしたの!」


『あ、それっておれがさっきシャーロットに聞きたかったことだ……。本当にどうしてテイムできたんだろう……?』


 そう思うミナトの心を無視するかのように、


「多分だけどミナトの力が私よりも高いレベルで作用しているからだと考えられる。つまりこの私がかけた想起される永遠不滅の契約エターナル・コンタクトを上書きしたのか、奪ったのか……、そう言った形で自身のスキルを適用したのよ!」


 ミナトのことを誇るように胸を張ってそう宣言する美人のエルフ。デボラたちも感心したように頷いている。すると、


 パリン……。


 そんな音と共に首無し騎士デュラハンの頭部が砕けた。しかしそんなことを気にする様子もなく首無し騎士デュラハンはミナトの前に進み出るとその場で跪く。


「え!?」


 驚いているミナトに、


「魔王様に我が剣と生涯の忠誠を捧げます!」


 頭部がない筈なのにその声はミナトの耳へしっかりと届いた。


「あ、あのう……、い、いや……、だから魔王じゃないんだけど……」


 しどろもどろで返すミナトのそんな言葉は聞こえないとばかりに跪いて、たぶん頭部があれば頭を垂れている首無し騎士デュラハン……。


「あ……」


 ミナトは気付いてしまった……。首無し騎士デュラハンさんの身体がうっすらと光り輝いていることに……。

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