第386話 何度目かのお約束な展開に……

「ミナト。魔王は言い過ぎだとは思うけど首無し騎士デュラハン……、正確には煉獄の首無し騎士ヘル・デュラハンって基本的なところは騎士だから主君となる存在がいたほうがいいのよ。もう既にテイムしかけているみたいだし、この子の主君になってあげたら?」


 ニコニコ顔でシャーロットがそう言ってくる。


「みんなも異論はないみたいよ?」


 シャーロットの言葉に呼応するかのように、


「うむ。煉獄の首無し騎士ヘル・デュラハンは強い魔物だ。必ずマスターの助けとなる!」

「ん。仲間は多いと楽しい!」

わたくしも歓迎します~」

「マスターの判断に異論などある筈がありません!」

「ワタシはマスターに従いまス~」


 デボラ、ミオ、ナタリア、オリヴィア、ピエールも笑顔でそう言ってくる。みんな煉獄の首無し騎士ヘル・デュラハンを歓迎するらしい。ミナトは眼前で跪いている煉獄の首無し騎士ヘル・デュラハンへと向き合って、


「えっと……、魔王様じゃなくておれのことはマスターって呼んでくれると嬉しいかな……?」


「承りました!それでは本日よりミナト様のことをマスターと呼ばせて頂きます。我が剣と生涯の忠誠はマスターと共に!」


 跪きながらそう誓いを立てる煉獄の首無し騎士ヘル・デュラハン


「もう立ち上がってくれないかな?おれ達は仲間で、基本的に対等な関係でいたいからね?」


 そう言って煉獄の首無し騎士ヘル・デュラハンを立たせたミナトだが、そんな二人に、


「第一夫人よ」

「うむ。第二夫人だ」

「ん。第三夫人!」

「第四夫人ですね~」

「愛人です」

「二人目の愛人?」


 ミナトのという言葉に反応してシャーロットたちが言い募る。どうやらその辺りには拘りがあるようで……。


「では吾輩は……、あの……、どのような……」


「今はそこを気にしなくていいよ!うん……」


 困惑する煉獄の首無し騎士ヘル・デュラハンにそう返すのが精一杯のミナト。


「それではマスターの眷属となった吾輩に名をつけては頂けないだろうか?」


「やっぱり……?」


 いつものパターンにミナトは頭をひねる。


『名前……、名前……、鎧姿の騎士……、確かさまようあれの名前って……?でもキラーなマシンの名前の方が……』


 しばらく考えた後、ミナトは決断する。


「ロビンってどうかな?」


 ドラゴンを探すRPGの五作目でめちゃめちゃ強いキラーなマシンの名前がロビン。そこから拝借したのである。


 そう提案した瞬間、煉獄の首無し騎士ヘル・デュラハンの体が光り輝き、大量の魔力が溢れ出た。


「やっぱりそうなるよね……」


 そう呟くミナト。ミナトの【眷属魔法】である眷属強化マックスオーバードライブが発動した。


【眷属魔法】眷属強化マックスオーバードライブ

 極めて高位の眷属を従えるという類稀な偉業を達成したことによって獲得された眷属魔法。眷属化した存在を強化する。眷属を確認して自動発動。強化は一度のみ。実は強化の度合いが圧倒的なので種を超越した存在になる可能性が…。


「これは……、全身から力が溢れる……」


 煉獄の首無し騎士ヘル・デュラハンは光に包まれつつそう呟く。体内に圧倒的なまでの力と魔力が込み上がるのを感じる。特に魔力量はこれまでの自身が持っていた魔力量とは比較にならない大きさだ。その夥しい魔力量に不安と恐怖を覚えるが不思議と不快感はない。


 魔力の高まりと共に身体に変化を感じる。本質は同じままに存在そのものが書き換えられるような不思議な感覚。


『汝の名は?』


 唐突に頭に声が響いた。女性のもので声質は穏やかである。


「何者!?」


 背中に装備した魔剣の柄を握り周囲を見渡す。ここは王都近郊にある名もなきダンジョンの第五階層。周囲にはミナトやシャーロット、デボラ、ミオ、ナタリア、オリヴィア、ピエールが居た筈なのだが周囲には誰もおらず何も見えず他者の気配を感じることもできない。


『汝の名は?』


 重ねて問いかけられる。この現状はミナトが自身に付けてくれた名を問われているのだと判断した。


「吾輩の名はロビン……。マスターであるミナト様の眷属にして生涯を懸けて仕える騎士……、首を失った闘神ヘル・オーディンのロビンである!!」


 輝きが収まる……。そこには先ほどと変わらない姿の首無し騎士デュラハン、改めてロビンが立って……、


「ロビン?顔が……?それに鎧と剣は……?」


 そこには先ほど作り物デコイで作製したものより遥かに美しい顔立ちで黒髪のロングヘア―を靡かせる、漆黒のドレスを纏ったスラリとしたスタイルの女性が立っていた。

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