第269話 レイド開催!
ミナトが率いる冒険者パーティ『竜を饗する者』の一行は案内に書かれた集合場所へと移動する。集合場所は既に多くの冒険者で賑わっていた。
ギルドの職員を見つけたミナトは自身のパーティの参加を告げる。職員の手元にあるタブレット型の魔道具には、既にミナトたちのパーティ名が登録されているらしい。それを確認した職員からの案内で鉱石の運搬役としてレイドに参加した冒険者達と合流した。普段であればもの凄い注目を集める状況なのだが、
『運搬役に戦闘能力は求めないって話だったけどみんな本当に駆け出しって感じだね……』
周囲を確認してそんなことを念話で飛ばすミナト。その言葉の通りに周囲には若い……、を通り越してまだ幼さを感じさせるような冒険者パーティもいる。
『この子たちも私たちに声をかけてきたような連中に絡まれているのかしら?』
少し心配そうにシャーロットが言ってくる。
『どうだろう……、そうならなんとかしてあげたいけど、ここで絡まれていますか?って聞くわけにもいかないしね……、ちょっと様子見かな?』
『何かを仕掛けてくるのを待つのね?』
『いまのところは……、だけどね?』
ミナトとシャーロットがそんな念話を交わしていると、『地のダンジョン』の入り口方向から冒険者達の歓声が聞こえてきた。この日のために作られたと思われるステージ上に一人の男が登場したのだ。蒼い長髪を後ろで纏めたかなり大柄な男である。年齢は三十前後といったところか……。特徴的なのはその装備、宝飾が施された豪華な鞘に納まった大剣を携え、白銀に輝くかなり巨大な大盾を背負い、盾と同じ素材なのか白銀に輝く全身鎧に身を包んでいる。
『聖騎士モドキな冒険者?』
その仰々しくド派手な出で立ちにとても失礼な単語が頭に浮かんでしまうミナト。しかし周囲の認識は異なるらしい。
「おお!リーダーのお出ましだ……」
「ああ、この街最強の冒険者ってやつだな……」
「あれが、A級冒険者のレバンドンさん……」
「流石に威厳あるお姿ね……」
「別名が迷宮の聖騎士ってか?」
「『大穴の
そんな声が聞こえてくる。
「あれが『大穴の
思わず声に出して呟くミナト。
『A級冒険者というのは間違いないみたいね。魔法も使えるみたいよ?』
シャーロットが言ってくる。
『うむ。対人戦では王都にいるA級冒険者のティーニュと互角かやや上……、対魔物との戦闘では上といったところか……』
『ん!マスターに比べたら雑魚!』
『ミオ様!マスターと比べたらあの冒険者があまりにも可哀そうですよ?』
デボラは冷静に実力を教えてくれるが、ミオは容赦がない。ミオを宥めているように見えるオリヴィアもなかなか辛辣である。
そしてステージの下には先日ミナトとシャーロットが遭遇したジングと呼ばれた赤毛の剣士とカトリナと呼ばれた
『あの二人もいるな……』
『そうね……』
『うむ。あの女が
『ん。ロクな死に方はしない……』
『確かに魔力の淀みを感じます』
それぞれの感想が念話で伝わってくる。さらにその横にもう一人、槍を携えた黒髪の男が静かに佇んでいる。『大穴の
『シャーロット……、あの槍って何?』
『魔槍ってやつね。ちょっとタチが悪そうよ?』
『うむ。あれは魔物ではなく人族や亜人の血を随分と吸っているようだ……』
『ん。あれも同類!』
『リーダーはよく分かりませんがあの三人が街を代表する冒険者のメンバーで本当にいいのでしょうか?』
そんなことを念話でやり取りしていると、ステージに立ったレバンドンが口を開く。
「今日はよく集まってくれた!この規模でレイドを開催することは私の悲願だった。今日という記念すべき日を迎えられたこと、そして参加してくれた諸君のことを誇りに思う。目指すは世界最難関ダンジョンの一つ『地のダンジョン』の第五層!!魔物は我々『大穴の
その言葉に拍手が巻き起こる。拍手に満足したのかレバンドンが右の拳を高々と掲げる。
「ここにレイドの開催を宣言する!!」
ひと際大きな歓声に広場が包まれた。レバンドンのそして周囲の様子を確認していたミナト。大歓声を上げる者と表情暗く俯く者がいたことをミナトは見逃さない。そして恐らくだが分かったことがもう一つ……。
『あのレバンドンって人は本気で冒険者のことを考えてレイドを主催した……?そして下級冒険者の利益を掠め取っている者の存在に全く気付いていない……?』
今回のレイドが若手冒険者の助けになってほしいという強い信念を感じてしまい戸惑いの表情を浮かべるミナトであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます