第268話 その名は……
今日も秋晴れの古都グレートピット。この日の冒険者ギルドはかつてないほどの賑わいに包まれている。この街を代表するクランである『大穴の
この街は職人も多いが冒険者も人口の主要な割合を占めるほどいる。それら原因なのか街は出店も並ぶちょっとしたお祭り騒ぎになっていた。
そんな賑わう街並みをすり抜けて、ミナトはシャーロット、デボラ、ミオ、オリヴィアの四人を引き連れ冒険者ギルドへと到着した。
ミナトはいつもの冒険者風の装いで、腰には相手の武器を払うことができるくらいの短剣を装着している。今日の装いは夏に使用していた薄手の装備だ。秋冬用に仕立てた厚手の生地を使ったものは【収納魔法】の
シャーロットは前回この冒険者ギルドに来た時と同じ、ロングスカートとやや厚手のニットという温かそうな装いに魔導士風のローブを上から羽織りフードで顔を隠している。
デボラは鮮やかな赤を基調にした民族衣装風の装い。ロングスカートに控えめのスリット、上着にはフードがついておりそれを目深に被っている。
ミオはデボラと同じデザインながら美しい深い青を基調にした民族衣装風の装いである。デボラよりもスカートのスリットはこちらの方が深いかもしれない。そしてこちらも目深にフードを被っている。
オリヴィアは普段の執事風の装いではなくパンツスタイルに皮の胸当てとダガーナイフという動きやすさに重点を置いた初級の斥候といった装いだ。ゴーグルとマスクで顔の大半を隠している。オリヴィアだけが冒険者として登録をしていなかったのだが、昨日、ルガリア王国の王都にある冒険者ギルドでF級冒険者としての登録は済ませておいた。
このクラスの四人が一堂に会するとフードやゴーグルで顔を隠してもその魅力は隠しきれるものではない筈なのだが、今日はちょっと様子がおかしい。ミナトの目から見ても全く魅力を感じないのだ。
「効いているみたいね?」
そう言ってくるのはシャーロット。
「なんかすごい……。何だろうこの感覚……。シャーロットが普通の女性冒険者に感じる……?」
そう返すのはミナト。デボラもミオもオリヴィアも普通の女性冒険者に見えるというか感じてしまう。
「これが光魔法の一つ
「おれは一応、目の前にいるのがシャーロットたちであることは分かるけど……?」
「それはミナトが私たちのことをよく知っているからよ。初めて私たちを見た連中はどこにでもいる普通の女性冒険者と認識するでしょうね。そして私たちの容姿を正確に把握することはできないわ」
「凄い効果だね……」
感心するミナト。
「うふふ……。ミナト!
思わぬことを言ってくる今日は魅力を抑え気味の美女エルフ。
「どうして?」
ミナトが聞き返す。
「魔法レベルの低い
「サスガデス……」
改めてシャーロットの魔法の腕に驚嘆するミナトであった。
そうしてミナトは何も騒動を起こすことなく四人を連れて冒険者ギルドのカウンターへと到達する。
「……はい。ミナト様とそのパーティメンバーの方ですね。人数の変更がないこと確認しました。こちらに地図がございますが『地のダンジョン』のここ……、入り口近くの広場が集合場所となっております。そちらへ移動して職員と『大穴の
了承して立ち去ろうとすると、
「すいません!一つ確認を忘れていました。パーティ名はいかがされますか?レイドでは参加するパーティを一言で呼ぶことができるようにするためパーティ名を設定することになっているのです」
そんなことを言われてしまった。
「そうかパーティ名か……、どうしよう……」
困ってしまうミナト。せっかくファンタジー的な世界に転生して冒険者をしているのにパーティ名を考えていなかったことを不覚に感じる。ここは真剣にカッコいい名前を付けたいところだが……。
「簡単じゃない?」
「うむ。決まっているな!」
「ん!一択のみ!」
「私もこれしか考えられません!」
四人の今日は魅力控えめな美女たちが口々にそう言ってきた。
「決まってる?」
そう聞き返すミナトにシャーロットが右手の人差し指を突き付ける。
「とーぜん!」
そんなシャーロットの様子にデボラ、ミオ、オリヴィアが頷いている。
「私たちのパーティ名は……」
フードやゴーグルの下で四人の美女がとびっきりの笑顔になっていることが分かる。こんな時は
「「「「竜を饗する者!!」」」」
四人の美女の声が一つに重なる。ここにミナトの冒険者生活におけるパーティ名が決定したのであった。
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