第63話 暗い熱
強く押しつけられたまま体ごと振り回すようにされて、ルティアはくるくる目を回した。
気付いた時には放り投げられていて、ベッドにぽすんっと投げ出された。天井をみつめる間もなく、ガルヴィードが圧し掛かってきて、その切羽詰まった顔にルティアは訳がわからないままぞくっと震えた。
ずっと握りしめられていた手首は、頭の上でもう片方の手とひとまとめにされ寝台に押しつけられる。
「ガル……」
戸惑うルティアは、漆黒の前髪の隙間から覗く黒々とした目に、これまで目にしたことのない暗い熱が宿っていることを感じ取って、不意に恐ろしくなった。
声もなく震えるルティアを暗い瞳で見下ろし、ガルヴィードははあっと熱い息を吐き出した。
ガルヴィードの手がルティアの襟を掴み、ぐいっと力任せに引き下ろされ、ルティアの鎖骨が露わになった。
「やっ……」
思わず跳ねた体を、上に乗っかった体に押さえつけられる。
ガルヴィードは怯えるルティアに構わず、襟から手を放し今度は帯に手をかけた。
「ガっ、ガルヴィード!?」
頭は混乱していたが、とにかくこのままではいけないと悟って、ルティアは暴れ出した。だが、ガルヴィードにしっかりと押さえつけられていてろくな抵抗が出来ない。
力で適わないのは知っていた。今までもルティアが暴れると押さえつけられたり抱え上げられたりして宥められるのが常だった。
でも、こんな風にぎりぎりと手首を握られて、身動きできないように全身を無理矢理押さえつけられたことなどない。
帯を解いた手に腹から胸まで撫で上げられ、ルティアはぎゅっと目を瞑った。
「ルティア……っ!」
苦しそうに名を吐き出され、首筋に熱い息がかかった。
「や……」
ルティアは目を瞑ったまま首を振った。
怖い。幼い頃からよく知っているはずのガルヴィードのことが、まるで知らない人のように感じられて怖かった。
「いや!いや、放してっ……」
「っ、……お前はっ」
ルティアが身を捩って逃げようとすると、ガルヴィードは苛立たしげに叫んだ。
「俺の子どもを産むんだ……っ!俺の……俺の!!」
怒声を浴びて、ルティアはひゅっと喉を詰まらせた。
見開いた目から、涙がこぼれ落ちた。
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