第19話 陰謀のドレス
「そうだルティア。実は貴女に新しいドレスを仕立てたのよ。今日はそれを着て城に行きなさい。ガルヴィード殿下にお見せしなくては」
「……普通のデザインでしょうね?」
とんでもなく露出の高いドレスでも着せられやしないかと警戒心バリバリのルティアだったが、部屋に届けられたドレスは実にシンプルで上品なデザインだった。ぱっと見は白っぽく見えるが光の下では薄い桃色に光る生地で、丈はちょっと短く膝丈のスカートにはごてごてとしたフリルも付いておらず、飾りは帯についた大きなリボンくらいだ。飾りが少なくても袖がレースなので華やかさに不足はない。
一目で気に入ったルティアは早速着替えて上機嫌で城へ向かう馬車へ乗り込んだ。
「ガルヴィード!見て見て!新しいドレス!」
「おう」
ソファに寝ころんで本を読んでいたガルヴィードは、部屋に入ってきたルティアをちらりと見て本に目を戻し——思わず二度見した。
「お前……」
「皆似合うって言ってくれたの!ここに来るまでにいろんな人とすれ違ったんだけど、全員ドレスを見て「素晴らしいドレス」って言ってくれてね!」
「……」
本をテーブルに置き、ソファから身を起こしたガルヴィードは、こめかみを押さえて深い溜め息を吐いた。
それから、ちょいちょいと手招きしてルティアを呼んだ。
ルティアは素直にガルヴィードに近寄ってくる。その腰を掴んで引き寄せた。
「ガルヴィード?」
ガルヴィードは難しい表情でじっとドレスを睨んでいたかと思うと、おもむろに鼻を近づけてふんふん匂いを嗅ぎ始めた。
(ふぇ?ふぇ?)
お腹のあたりにガルヴィードの息づかいを感じて、ルティアは慌てた。
(な、なぜ嗅がれてるの?私?)
思わず身を引いて逃れようとするが、腰に回された腕がそれを許してくれない。
ちなみに、ルティアがうきうきと部屋に入ってきてすぐにガルヴィードに手招きされたため、部屋の扉は開いたままだしなんなら戸口にまだ侍女が立っている。その侍女は立ったまま扉を閉めることもなく、ルティアとガルヴィードを見てなにやら熱心に書き付けている。キラキラした目で。
そう、羽化しそうな蝶を見守る少年のような瞳で。
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