第14話 理性の勝利
「おい、ガルヴィード。ちょっと相談が……どうした?」
王太子の部屋の扉を開けたルートヴィッヒは、目の前に広がる光景に目を見開いた。
入り口の近くに、この部屋の主が床に丸くなってうずくまっている。
そして、彼から少し離れて、涙を流す少女が顔を青くしてぶるぶる震えている。
「ルティア嬢?いったい何が……」
「が……ガルヴィードが……い、いきなり……」
ルティアは怯えながら言った。
「いきなり……自分で自分のお腹を殴って……」
「はあ?」
ルートヴィッヒは眉をひそめて床で丸まる主君を見た。
ガルヴィードは、うずくまったまま左腕を伸ばし、テーブルの上、お茶の入った飲みかけのカップを指さした。
「……盛られた」
「なるほど」
その一言で、ルートヴィッヒは理解した。
つまり、お茶に混入されていたのだ。男性を強制的に元気にさせるアレ的なものが。
ルティアはわかっていないようで、お茶のカップとガルヴィードを見比べて疑問符を浮かべている。
誰の発案か知らないが、王太子に媚薬まで盛るとは。
命がかかると人は手段を選ばなくなるなぁ。と、ルートヴィッヒは人間の愚かさを噛みしめた。
***
「何してるんだ?」
後ろから静かな声をかけられて、ルティアは振り向いた。
知り合ったばかりの王太子が、堅い無表情でルティアを見ていた。
ルティアは立ち上がって手に握った緑のクローバーを見せた。
「ここ、四つ葉のクローバーがたくさんあります!」
「四つ葉?」
王太子は眉をひそめながらルティアの側に寄ってきた。
ルティアは近くで王太子の顔を見て、その頬がうっすらと赤くなっているのに気づいてへにゃりと情けなく眉を下げた。
先日の誕生パーティーでルティアがしでかした無礼を謝りにやってきたのだが、謝って許してもらうどころか新たに王太子の顔を叩くという罪が加わってしまった。父は国王に謝罪していて、まだ戻ってこない。ルティアは一人で待たされて心細くて、心を落ち着けるために四つ葉のクローバーを探していた。
「そんなもん、探してどうする?」
「みつけたら、いいことがあるんですよ?」
「そうなのか?」
ルティアはぱちぱち目を瞬いた。意地悪な王太子だと思ったのに、今はなんだか普通の子供みたいだ。
「私、みつけるの得意なんです!」
ルティアはにっこり微笑んだ。
ルティアの笑顔を見て、王太子はちょっと目を見開いた。
それから、ぽつりと言った。
「俺の方が、たくさんみつけられる」
その言葉にむっと口を尖らせて、ルティアは王太子を睨みつけた。
「じゃあ、勝負しましょうか?」
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