(7)

 王都に帰り着いて数日後……王都刑吏より呼び出しが有った。

 逮捕される覚えなど無いし……そもそも「王都刑吏」は庶民がやった犯罪しか取締れない筈だ。

 しかも……王都刑吏の本部に来てみると……。

「えっ?」

 役人に案内された部屋に居たのは……隣国の王子殿下と「影」を除く「旅の同志」達だった。

 隣国の王子の御付きの護衛であるヴィシュマ殿は気まずそうな顔。

 魔導師は微かな疑いの目を私に向けていた。

 司祭は……困ったような表情だった。

「畏れ入ります。この母子は御貴殿の知り合いでしょうか?」

「えっ?」

 我々が通された部屋に、新たに連れて来られたのは……。

「あああああああっ⁇ どうなってるっ⁇」

 親に仲を引き裂かれた……かつての恋人……。昔、剣術を習っていた道場の近くの雑貨屋の店員だった女……当時は娘と呼ぶべき年齢だったが……だ。

 そして……その横には……5歳ぐらいの男の子……。いや待て、彼女との仲を親に引き裂かれたのは……丁度……。

 それに……この子供……私の子供の頃に良く似ている気が……髪と目の色も同じだ……。

「どうやら……行方不明中の御貴殿の妹御が、この母子の生活の面倒を見ていたらしいのです」

 刑吏の役人は、そう説明した。

 彼女は役人の説明を肯定するように、軽く首を縦に振った。

「えっと……つまり……?」

「母一人で子を育てる為の生活費を御貴殿の妹御が援助していたようで……今の仕事は、さる下級貴族の子供の乳母を経て、その家の召し使いになったようですが、その仕事も御貴殿の妹御の紹介だったそうです」

 やはり、彼女は軽くうなづく。

「ま……待ってくれ……その……確かに彼女は知人……いやその……よく知った仲だが……えっと……」

 彼女の手を見る。

 子供の方には流石にされていないが……。

 まるで罪人のように手鎖が……。

「この者の家に不審な3人の女が逗留していた事が判明しました」

「えっ?……まさか……」

「変装はしていたようですが……言葉や立ち振る舞いからして……近所の者達は、身分を隠していた高貴な方々と判断したとの事です」

 膝に力が入らない……。立っているのがやっとだ……。

「その3人は……?」

「はい……この女の近所の者から通報が有り、我々が駆け付けた時には、姿を消していました。姿を消したのは……御貴殿らが王都を出立した数日後のようです。そして……王都の『門』の1つの通行記録に……それらしき者達についての記述が有りました。3人が姿を消した日の……昼の最も人通りが多い時間帯に、中年の身分が高そうな女が1人だけ……そして……庶民風の服装なのに、まるで高貴な身分の方々の如き立ち振る舞いの若い女と女のような容貌の男の2人連れが……同じ門から街道に出た模様です」

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