乙女ゲームの世界だと分かった時期が、本編時間軸じゃなくてホラーなファンディスクの方だった
仲仁へび(旧:離久)
01
前世の記憶がよみがえって、現代日本で生きていた知識があふれてくる。
しかし、目の前にあるのはキラキラした西洋的な町の光景。
私はその瞬間分かった。
乙女ゲームの世界転生したのだと。
すぐに分かった。
前世でやっていたゲームの光景とそっくりだったからだ。
これで、好きな攻略対象とイチャイチャできる!
と思ったら、前世の記憶がよみがえったタイミングが最悪だった。
原作終了後だった。
しかも、ファンディスクスタートの時期だったからだ。
ジャンルは恋愛?
違います。
ホラーです。
「さあ、いこうか。肝試しに」
「えぇぇぇ」
という瞬間が今まさにここ。
たどり着いたのは廃墟。
めっちゃ草生い茂ってるし、ドン引くほど古いたてものだった。
確か他の攻略対象とゲームしてて、それに負けた罰ゲームだったか。
内容は、攻略対象と一緒に恐怖の屋敷に入って、そこで閉じ込められるという、トチ狂った内容です。
吊り橋効果を狙って、ドキドキ!
そんなの期待してる余裕なんて、ないってば。
ほら、さっそくでたぁ。
ガイコツがバターン。ガシャーン。
「きゃああああ!」
誰もいないのに、怨霊の声が。
「ひぃぃぃぃ!」
壁とか床とかから亡者の手がずらずらっ。
「いやぁぁぁ!」
やってる事といったら、ほぼ私が悲鳴上げてるだけですって。
転生キャンセルしたい。
ほらもう、攻略対象が笑い転げてるし、幻滅してそう。
絶対これ捕まえた攻略対象が幻滅して逃げる流れだし。
記憶を思い出してすぐだから、この世界の私のようにふるまえないんだって。お淑やかで綺麗で可愛い主人公みたいにできないんだって。
幸せの絶頂に打ち上げてから、あえて落とすって、そりゃないでしょっ!
私は必死の思いで、シナリオにそって行動していった。
恐怖の屋敷の仕掛けをクリアして、どんどん進んでいったよ!
心臓がいくつあってもたりない!
恐怖の屋敷から脱出した私は、息も絶え絶えになっていた。
横で笑い転げる攻略対象!
ああ、だめだ。
婚約破棄される!
悪役令嬢でもないのに、婚約破棄に怯えなくちゃいけなくなるなんて。
息を整えた私は、「さあ、帰ろうか」と攻略対象にさしだされた手をあっけにとられた。
あれ、幻滅してない?
すると「何を今さら」と昔話が始まる。
攻略対象と食堂のパンを取り合って、攻略対象を足蹴にする話。
その時スカートがめくれてパンツが丸見えだった話。
木に登って降りられなくなったネコを助けようとして、私も降りられなくなった話。
攻略対象の上に落ちて、下敷きにした話。
喧嘩していた攻略対象達の間に割り込んで、あおりをくらって殴られたのを根に持った私が、逆に殴りかかっていった話。
攻略対象をいじめていると、教師から勘違いされた話。
うんぬん。
あれ、そんなに私、主人公っぽくない?
前世の記憶を思い出した衝撃で、あやふやだた今の私の記憶が一気によみがえってくる。
じゃじゃ馬シーンばっかりだ。
うん、そんなにまともじゃなかった。
可愛げもなかったし、きれいなシーンがそんなにないね。
つまり攻略対象はありのままの私に惚れてるから、別に変なとこ取り繕わなくていいってことよね?
なーんだ。
自分で言っててなんか恥ずかしくなってきた。
「まあ、あの恐怖の屋敷を作ったのは俺なん」
私は般若の顔を作って即座に横にいる男をぼこぼこにした。
やーい、顔面お化け。
そのままイケメン台無しにしてろ!
さて君、プロレスごっこは好きかな?
次のデートはリングの上にしようか。
乙女ゲームの世界に転生した…と思ったらファンディスクの(×ホラー)(〇バイオレンス)ゲームの方だった。
乙女ゲームの世界だと分かった時期が、本編時間軸じゃなくてホラーなファンディスクの方だった 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032
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