第10便

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 あなたは、意気地なしです。

 

 あなたが誰なのかだの、貴方わたしには帰る場所がないだの。

 そんなことより、すぐ隣にいる人に心を向けるべきです。


 ドジだかマヌケだか知りませんが、あの絵から見るにかなりの不器用なことは間違いないですね。


 まさか訳文もつけないで送ってくるとは、彼に相当な無茶ぶりでもしたのでしょうか?


 彼がそんな中、伝えたかったことはよくわかり……ませんでした。

 でも、彼は「そんな中でも伝えよう!」と思って精一杯描いた。


 彼とあなたの周りに起きたこと、

 彼があなたと共有した時間、

 それを通じて、

 彼とあなたが互いに支え合える存在になったこと。

 あなたが彼に対してそうであるように、

  ¶—愛→あなた

 であること。


 それが伝われば十分でした。


 そんな人が隣にいながら「帰る場所もない」だのなんだの。


 あなたたちは幸せになれるのに、何躊躇ためらっているんですか。

 意気地なし。

 私がもしそちらに転移できるなら、今すぐ乗り込んで、あなたに平手打ちの一つでもしてやりたいくらいです。

 ——————✉——————



 その後、伝書鳩も手紙も、来ることはなかった。

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