妄想的時間の矢を考えてみる前に 「時間」て何だろう

 というところで、いよいよ時間の矢を妄想していくことにしていきますが、そもそも時間とは何でしょう。時間というものを人間が考え出したのは人間の都合です。

 朝ニワトリが鳴くのは、体内時計で朝が来そうになると本能的に鳴くからで、そろそろ午前5時になるからという義務感で鳴くわけではないし、暗くなると蛍が一斉にお尻を光らせるのは「おい、そろそろ19時だからみんな光らせようぜ」などと話し合っているわけではなく、暗い方が光が目立つからです。

 しかし人間には決められた時に決められた事をしなければならないというお約束事があります。そのお約束が細かくなればなる程、時間というものが大切になってきます。つまり時間に縛られているのは人間くらいなもんです。ですが、今ここで話題にしようとしている「時間」は社会人として当然守らなければならない「時間」ではなく、時の流れとしての「時間」です。混同しないように気を付けましょう。

 では、時間は本当に私たちが実感しているように一方通行なのでしょうか。一方通行なのかどうかは別にして、長い間一定の速さだと思われていた時間の流れですが、アインシュタインの相対性理論の登場によって、観測者の置かれた状況によって時間の速さは変わるのだという事になりました。

 例えば観測対象物が光の速度に近づくほどに時間の流れがゆっくりになっていき、より重力を強く感じる場所ほど時間の流れが遅くなることが分かっています。つまり、この宇宙にはこの宇宙に存在する物体の数だけ時の流れがあるということになります。この私と目の前にいるあなた方ともほんの僅か…知覚できないくらいにですが、時の流れに差があると考えられます。

 では、なぜ時間の流れが絶対的ではなくなったのでしょうか。それは、この宇宙の中で絶対的なのは光の速さだけだからだ、とされているからです。誰が見ても光の速さは一定であるとアインシュタインは言いましたし、ありとあらゆる実験結果はそれが正しいと示しています。

 光の速さは一定…光速度が不変であるというのは何を意味しているのか。光の速さは秒速30万キロであるとされています。いかなる状況でも自分の周りでは光速度は秒速30万キロであるというのは1秒に光が30万キロ伝わるという意味ではなく「1秒経ったのなら光が30万キロ進んだということです」或いは「光が30万キロ進んだのなら1秒経っています」という事を表しています。つまり、距離…空間の広さと言い換えてもいいでしょう…空間の広さも、時間の進み方も全て光速度によって決まるのです。取り敢えずこの事実は忘れないようにしましょう。

 ところで、光とは何でしょう。光とは電磁波の一種でした。電磁波というのは、物体を構成している原子とか分子が、何かしらやらかした時に発せられる信号の様なものですね。物が燃えると「こういう物で出来ている物がこれくらいの温度で燃えています」という情報が出てきます。それが私たちには光とか熱とかの電磁波として感じられます。つまり、電磁波は情報であるという事です。

 このように電磁波の一種である光は情報です。光速度一定の原理とは、言い換えるなら「『電磁波という情報』の伝わる速度を全ての基準にしましょう」となります。ならば、情報が伝わることこそが時間が流れるということになります。つまり、情報が伝わらなければ時間は流れない…時間が止まったままになってしまいます。

 情報が伝わらなければ時間は止まる。なんとなくですが、常に流れるものだと思ってた時間も止まることは止まるのかもしれませんね。止められるとすれば、そこから今度は時間を戻すことを考えてみましょう。情報が伝わることが時間が流れることになるのですから、単純に考えれば情報を後ろ向きに伝えれば良いだけです。情報…電磁波を後ろ向きに伝えるとはどういうことでしょうか。

 電磁波というのは特別の場合…例えば人間がパラボラアンテナ等を使って一方向にだけ強く出力するといったような場合を除いて、全方向に同じように伝わります。全方向というのは前後左右上下全ての方向という事です。全方向に伝わった電磁波を後ろ向きに伝えるというのは、一旦全方向に散らばった電磁波の力を、電磁波の発生源に戻すという事です。

 電磁波の力を電磁波の発生源に戻す…これって時間を戻している事になるのでしょうか?時間を戻しているのではなく、時間が戻ったから電磁波が電磁波の発生源に戻ったように見えるだけなのではないでしょうか。これでは「ニワトリが先かタマゴが先か論争」と同じです。

 実は時間が戻る場合としてもう一つ別の考え方もあります。私の妄想では、宇宙は風船の表面の様なものです。宇宙空間は「何か」の表面であり、風船に空気を入れて風船が膨らむと風船の膜が広がっていくように、「何か」が膨らむことで「何か」の表面である宇宙空間が広がっていると妄想しています。この「何か」は広がっていこうとする空間なのでこの「何か」の事を「妄想斥力空間」と呼ぶことにします。

 つまり電磁波は妄想空間を移動しながら、妄想斥力空間の膨張と同じ速さで「妄想斥力空間」の外側に伝わろうとしていることになります。風船が膨らむと風船の表面を移動している蟻が、風船の表面の移動プラス風船の膨らむ速さで風船の外側に向かって移動しているのと同じです。

 だとしたら、電磁波が宇宙空間の内側である妄想斥力空間の中心に向かって電磁波の力を集中させるならば時間が遡り始める…とも考えられます。それでは、宇宙空間はどうなってしまうのかと言うと、これまた宇宙空間の成り立ちに関わる話になり、少しややこしいことになりますので詳しいことは改めてお話しすることにしますが、電磁波の力を妄想斥力空間の中心に向かって集中させると、宇宙空間は収縮の方向に進むのではないかと妄想しています。

 そうなると宇宙空間自体の時間は遡るけれど、宇宙空間内の形のある物質に関しては物質同士で情報が伝わらなくなってしまうので、宇宙空間の消滅まで形を変えずに存在し続けることになるのだろうと考えています。

 先ほども言いましたが、時間が遡るという事を考えると、時間が遡るのが先か、時間を遡らせる原因になった現象が先か、という事が問題になってきます。例えば「宇宙が膨張から収縮に変わり、その時に時間が遡る」という考え方があるという話を紹介しました。これとて、宇宙が収縮するから時間が遡るのか、それとも時間が遡るから宇宙が収縮を始めたのかは、たとえビデオを見ていても分からないと思うんです。まあ、その辺は本物の科学者の皆様にお任せすることにします。

 実は、量子の世界で時間が逆転したという話があります。量子というのは粒子と波の両方の性質を持っているとても小さな物質やエネルギーの事です。その量子レベルで時間の矢が反転したという実験結果が得られたようですが、詳細は不明です。不明と言うか「私には情報の確認ができませんでした」と言った方が正確ですね。漏れ聞いた情報では、冷たい原子核から熱い原子核へ熱が自然に移ることを実験で観測したというのです。

 通常、熱というのは熱い方から冷たい方へ移るのが自然なことですが、冷たい方から熱い方へ熱が移ったというのが時間が逆転している事になるそうなんですが、この実験結果が時間が逆転することを示しているのかというとちょっと疑問は残ります。

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