第114話 愛の力
最初にログインしていたリロメラに続いてログインしたオレとエイミー。
彼女は戦意を抑えながらも、ギラギラしたものがコミュニケータから伝わってくる。
オレはネクロノイドとの初戦で、とにかくエイミーが攻撃性の強い人格だったことを思い出す。
目の前に敵が認められた場合は、倒さないといてもたってもいられない性格らしい。
オレも、このシミュレーターでは大分訓練させてもらった。
これはアールが改めて作り直した対戦特化型シミュレーターだが、借用した原型よりもオプションの選択や、体感反応値は別物といえるほどアップされている。
エイミーがこのシミュレーターでどう戦いを仕掛けてくるのか、楽しみでもあった。
なにせ、本物の人型搭乗戦闘ロボットのパイロットなのである、容赦の無さでリロメラといい勝負になるのか、その辺りも確認したかった。
突然、ミーコがログインしてきた。
“なに楽しそうな事やってんの? あたしも呼ばなきゃダメじゃん!”
ミーコは、やる気満々で挑発してくる。
一瞬張り詰めた意識の閾を壊すように、エイミーが言い放った。
“ねぇ、ゲームしない?
一番撃墜得点稼いだ機体が、一つだけ願いを叶えるってやつ?
ここにいる人とか、状況に対してね”
エイミーが何を思ってそんなことを言い出したのかオレは理解できなかったが、確かにエイミー・ロイドはそう言った。
“それいいね! やろうよ、面白過ぎ!”
ミーコは興奮して叫ぶように言った。
“面白れぇ、やってやろうじゃねぇか!
さぁーて、何をやってもらおうかなぁ”
リロメラは、底意地の悪そうな様相全開で言い放っている。
“よーし、近接戦-極超劇にセットな”
そんなモードはないのだが、リロメラは即皆殺しにでもしそうな勢いだ。
“おにいちゃん、ごめんなさい、あたし殺しちゃうよ!”
オレはどーぞどーぞといつものように言いそうになったが、何故だが今日はそうしなかった。
“残念だなミーコ、オレは殺せないよ”
無言だが、エイミーの“いつまでじゃれてんだ”的な意識が、コミュニケーターを通じて伝わってきた。
オレは、纏める意味も含めてルールを仕切る。
“じゃルールだけど…… 撃墜されたら大人しく退場、最後に残った者の勝ち、でどうだ?
撃墜ポイントよりもわかりやすい”
“いいよ! それでいこう!”
ミーコが叫ぶ。
“おぅ”
“いいわ”
決定した。
オレはコンソールに手を充てて、再び深呼吸をする。
“……あ、あの、私もいいですか?”
レイラの声が、小さく伝わってきた。
レイラが?
シミュレーターで遊ぶ時はもちろん、ほとんどこういった遊びには絡んでこなかった彼女。
心境の変化だろうか……
先の戦闘で、泣き出してしまった彼女であったが、何かが変わったのだろう。
“もちろんいいよ、レイラちゃん!
でも、おにいちゃんはあたしが殺すよ!”
元気に物騒な事を言い続けているが、レイラの返事はない。
まさか、オレを殺したいとか……
まぁいい。
“それじゃはじめるわね。
タイムカウント1620でスタートでどう?”
エイミーが、仕事中に使う語調で伝えてきた。
“OK”
“おぅ”
“いいよ”
“……はい”
よく解からない発端だが、仮想空間内での容赦なき殺し合いは、数分後に始まるようだ。
シミュレーターの外、鹵獲戦艦アールは、ネフィラに4Dスクリーンを投影、ミーコとレイラの数値の伸びをリアルタイムでモニターしている。
“これを見て、わかることはないかネフィラ”
“……ミーコちゃん、ログインした後の伸び率が、異常ともいえるわね。
少し遅れて入ったレイラちゃん、彼女の伸びも同じく異常なほどね”
“モニターしていた私から言えることは、彼女たちのメンタルに与える何らかの付加価値が、戦闘力を底上げする起爆剤になっている。
彼ら5人は、最後に生き残った者の要求を飲むという、生き残りゲームをしているようだ”
ネフィラは、小さく頷きながらも口元だけ笑みを浮かべる。
“アール、あなたにはわかりにくいかもしれないわ、うふふふ”
“笑っていないで教えてくれネフィラ”
ネフィラは満面の笑みを、戦艦アールに向けて答えた。
“愛の力よ”
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