第103話 それぞれの想い
あたしは、この機体の操作性を確認している。
あのシミュレーターとほとんど変わらないかも。
でも、少し軽すぎるかな。
アールが話しかけてきた。
“これはまだあくまで試作段階なので、期待通りのものにはなっていないはずだ。
なので、各リミッターの数値は暫定になっている。
動作状況を見ながら変更していくので、操作感を伝えてほしい”
“わかったアール”
“ミーコ、この機体は、君の運動神経と反射神経に合わせて特化したものだ。
通常、連邦が運用している人間用のラウンドバトラーとは、基本構造から違っている。
シミュレーターで遊んだ経験は勿論活かせるが、これはそれ以上のポテンシャルを持っている。
ヒートアームだが、この発光する部分は、レーザーソード及びレーザーイージスとして機能する。
剣や粒子ビームで攻撃してきた敵を、その発光する部分で弾き返すことが出来る”
“あ、ホントだ凄い! ちょっと思っただけで、すぐ発動するね!”
“そうだ。
反応速度もシミュレーターの比ではない。
その腕の排出口のような隙間だが…… ミーコの光り魔法を使う時、それが射出口となる”
“うん、わかった”
あたしはまるで踊るように空中できりもみ回転すると、レーザーアームを全開で発光させてみる。
4Dモニターから見る姿はまるで、回転する光の噴水のように、眩い光を纏っていた。
◇ ◇ ◇
やった…… 遂に、私の機体ね。
シミュレーターではそこそこの数値だったけど、私はあのゲームでは自分を表現しきれない限界を感じていた。
私の限界ではない、シミュレーターの限界。
あのゲームは、本当に操作する人の性格が手に取るようにわかった。
ミーコちゃんは、私と同じキャティア……
でも彼女の運動神経は、私自身や、私の知ってるキャティアよりずっと優れてる。
どちらかと言うと、豹とか、もっと上位の獣に近いかも……
でも、私は私、彼女は彼女。
この機体、どんな個性を見せてくれるんだろう。
その時、アールが話しかけてきた。
“アンナ、具合はどうだい?”
“……すごくいいわ、すぐ私の意思に馴染んでくれたみたい”
“そうか。
その機体は、君の強い攻撃性を鑑みて、特化させた内容になっている。
先ほども気づいたように、その腕の部分は可変して機能する、君の魔法力、氷に合わせてね。
腕の部分の斜めの隙間、そこから氷のソードが出せるようになっている”
私は、すぐにイメージして、金剛氷のソードをだしてみる。
この機体の全長に近いほどの大きさのソードが一瞬で現出した。
“アンナ、それでいい。
サイズは自分で調整してくれ、その部分から氷魔法を射出、そしてソードの根元の部分で金剛氷の盾を創出もできる”
ソードを出しながら、盾が瞬時に出来上がった。
“アール…… ありがとう、これ、私の想像以上に使いやすいかも”
“君なら存分に遊べ…… いや、戦えるだろう”
私はまっすぐ飛行しながら、ゆっくりと回転して金剛氷の弾丸を撒いてみる。
4Dモニターで見る自分の機体は、光の鱗粉を撒きながら、蝶が舞っているようだった。
◇ ◇ ◇
……わたしの機体
一洸さんの乗っていた、あのラウンドバトラーとは違うけど、同じ戦闘ゴーレム。
一洸さんの代わりができる、私、これでもっとあの人の役に立てる。
きっと、もっと、あの人の力になってみせる。
ミーコちゃんが一洸さんの大事な存在なのは知ってるし、ミーコちゃんが一洸さんを…… 死ぬほど愛してるのも知ってる。
だから、私は二人の邪魔はしないし……
絶対、しない。
一洸さんの力に、少しでもなれればいい。
ネフィラ先生も、一洸さんのことが大好きみたい。
だから、私は、その次でもいい。
私は、それでいい。
“レイラ、調子はどうだい?”
アールが話しかけてくれた。
“……あ、あの、すごく動かしやすいですよ”
“それはよかった。
きみの機体だが、土や石の魔法を行使する際、全身を広げるようにすると、腕と脛の部分が射出口になって、硬石を発出させられる。
射出面が大きいから、かなりの攻撃力となる”
私はアールの言う通り、空中から全身で万歳をするように機体を広げて、氷石獄の時のイメージで、硬石を撃ってみた。
まるで、嵐のような硬石が、いつもの見えないくらいの速さで飛び出してくる。
これはすごく便利でいいと思った。
魔法の術式展開だと、射出口をイメージしなければならないけど、これならすぐ展開できる。
“……アール、すごくいいです、ありがとう”
“それと背中にあるソードだが、一洸の持っていたオリハルコンを複製して作成したものだ。
そのままでも使えるが、君の力でより強く機能することだろう”
わたしは、背中の剣を抜いてみた。
鞘から抜き出すと、それは光輝いて、私の白い機体を照らした。
まるでカミオさんの戦っている時のような絵柄で、これが私の乗っている機体だなんて信じられない。
一洸さん、必ず、あなたの役に立ちます。
必ず。
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