恐喝されている女の子を助けたら学校で有名な学園三大姫の一人でした
恋狸
第1話
ラブコメ初投稿です!
到らぬ点が多いとは思いますが、どうか温かく見守ってくれると幸いです!
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ちらっ。
ふいっ。
ちらっ。
ふいっ。
と視線の応酬をかれこれ十回は行っている。
場所は
俺こと
あ、また目があった、あ、逸らされた。
その視線の相手は
黒く綺麗な髪に、男を惹き付けるくりっとした目とスレンダーなプロポーションだが、大の男嫌いで有名である。
すでに同級生や上級生にも告白され、その数は三桁にも及ぶと言われているが、白海は全て断っている。
しかも断り方から、『絶海の残虐姫』と言われている。中二病かよ。
そんな彼女と俺は、さっきから視線が合うと逸らされている。
俺が視線を感じてその方向を向くと白海がいて、目が合うとすごい勢いで逸らされる。その目はどこか睨んでるように見えて。
……どうやら俺は嫌われているらしい。
「なんかしたかなぁ、俺」
「ん? どうした?」
俺が思わず声を出すと、隣にいた俺の親友が声を掛けてきた。
そいつは
校内1のイケメンと言われていて、それに中学の頃、バスケ部でこいつを中心に全国に行ったことが知れ渡り、人気に拍車をかけている。ただ最近はあまり、告白されていることを聞かない。
まああとは、特に人気なのは心を溶かしてくる甘い声質だろう。
俺も慣れていなく、急に声を掛けられるとおぅ……となってしまう。それなのに彼女がいないときた。
しかも、それを別に誇ったり調子に乗ったりすることもないから真のイケメンというものだ。
俺は心配してくれたケイヤの顔をしみじみと見る。肌は女子みたいに艶々で、髪はさらさらだ。
羨ましい……ハッ! ちょっと願望出た。
「な、なんだよ」
じっと俺が見てることに少したじろぐ様子。
「いや、相変わらずお前はイケメンだなぁって」
「急にどうした。俺にそっちの気はないぞ」
否定したのになぜか、満更でもない様子に見える。
証拠に頬がほんのり朱くなっている。
え、待ってそういう展開は嫌だよ。
アイ・アム・ノンケ!
「いや、俺もないから。まあそれはいいとして、なんかさっきから白海と目が合うと逸らされるんだよ」
俺が気付いたことを口にすると、ケイヤが訝しげに俺を見た。どこか疑い、馬鹿にしたような目。
な、なんだよその目は。
「あの白海とねぇ……お前の自意識過剰なんじゃね?」
馬鹿にした表情はそのまま、バッサリと俺の意見を切り捨てる。
俺もそう思ったけど直接言い過ぎじゃないか……。
だが、やけに目の合う回数が多い。偶然……にしては回数が多い。自意識過剰ではない……はずだ。いかんせん理由がないため、尻すぼみになる。
「いや、でも本当なんだよ! あ、ほら! ってヒエッ!」
さっきと同じく視線が合うと逸らされる、が今回の白海の目はこっちを睨んでるように見えた。
悪鬼のような視線で睨まれた俺は、蛇に睨まれた蛙のごとき表情を浮かべ震えるしかない。
え、なんで!?
「あの目を見ろよ……お前、なんかしたなら謝った方がいいぞ」
馬鹿にした笑みから一変、急に真面目な表情で俺の両肩に手を置き、真っ直ぐ目を見つめてくる。
睨まれる覚えの無い俺は首をぶんぶん振る。
「な、なにもしてないんだけど! え、なんか無意識にやっちゃったのかな……」
ケイヤは優しくポンポンと肩を叩いてくる。その顔は慈愛に満ち溢れていた。
「ケイヤ……」
そんな表情に俺は安堵する。
きっとケイヤならなんとかしてくれるだろう、と俺は信じた、が、
「……どんまい」
「え、アドバイスとかは……?」
「んなもんねぇよ。自分でなんとかしろ」
この薄情ものがぁぁ!
結局、睨まれたあとに白海と視線が合うとことは無かった。
頑なにこっちを見なかったからだ。
そんな行動に、俺は何かしたのか……と意気消沈しながら、残りの授業に挑んだ。
俺は全授業が終了したあと、今日は部活がないため1人で帰る。
俺は文芸部に入っているが、部員は5人だけなのでこの学校の規則的に同好会なのだが、そこは部長が頑として譲らないため、文芸部という名前が残っている。
一人で帰る、とあえて言ってる時点で察していると思うが、俺は友達が少ない。ケイヤと文芸部の部員だけしか友達と言える存在はいない。
まあ、他にも例外でいるのだが。
俺に友達が少ないのはきっと確実に容姿のせいだろう。
性格……でないと信じたい。
俺は生まれ持った鋭い目付きを隠すため髪を伸ばしている。中学生まではあまり気にしていなかったのだが、あまりに周りから怖がれるもんだから高校からはこのスタイルでいった。
俗に言う高校デビューというやつだ。
まあ、逆の意味だが。
まあ、そんなわけでクラスメートからは陰キャのオタク、といったイメージが付けられている。オタクのイメージは確実に文芸部に所属してるせいだ。恨む。
オタクとか陰キャのイメージが固定化されてしまった今、それは友達が出来ないわけだ。
というかこんな俺と友達のケイヤすごい。
長い髪型をしている俺だが、今朝は少し伸びたなと思い、切ろうとしたら、思いの外切りすぎてしまったため、目が見えてしまった。
……もしかしたら目付きが少し見えていた俺が醜すぎるがあまり白海に睨まれていたのでは……!?
もし、そうだったら明日からはカツラを着けなければいけないだろう。
俺は覚悟? を決めた。
帰り道、少し日が傾き始めた時間に俺は、歩いていた。すでに夕暮れといっても差し支えのない時間で、その証拠に俺の影が長く伸びていた。
俺の家は徒歩20分辺りにある。そのため俺は歩きか自転車で高校に通っている。
いつもは楽したいので、自転車だが、今日はたまたま歩きたい気分だったため、歩きで来ているわけだ。
ぼーっとしながら店が立ち並ぶ商店街を歩く。斜陽が商店街に当たり、大きな影を伸ばしている。
この時間帯であっても札幌の中心から外れたこの地区では、商店街も人気がなく寂れてしまっている。
シャッターが閉まっている店が多く、その活気の無さから人っ子一人もいない。
そんな場所を歩いていると、ふいに悲鳴のようなものがうっすらと聞こえた。
「──かっ! ──けて!」
掠れているその声に俺はとっさに耳を澄ませ、悲鳴の出所を探す。
自分の耳に全神経を集中させる。
どうやら、とあるシャッターの閉まっている店の裏側から悲鳴のようなものが聞こえている。
おれは刹那、助けるべきか迷ったが、その一瞬が手遅れになっては後悔する、と思い駆け出す。
「おいっ! 騒ぐんじゃねぇ! どうせここは誰もいねぇんだ。さぁ、さっさと金を返しやがれ! できねぇなら相応の罰は受けてもらうぞ」
「そうだそうだ! 俺たちはこの街一番のヤクザの『天笠』だぞ!」
「ひぃっ! いやぁ!」
俺が見た光景は黒服の小太りのおっさんと、同じく黒服の今度はひょろっとしたおっさんの二人が女子高生を囲んでいた。
おっさんたちは女子高生に迫り怒鳴って、恐喝をしている。
しかも……
「おいおい……あれ白海じゃん」
その女子高生は紛れもなく朝、俺を見ていた白海だった。
飄々と過ごしていた今朝とは違い、その表情は恐怖に彩られている。
クラスメートの危機、だが俺は確実に問題無いと判断していた。
なぜなら──
「おい、ヤス、ヒデ。てめぇら何してんだぁ?」
俺は後ろから歩き、ポンと小太りのおっさん……ヤスの肩を叩く。
「あぁ? てめぇ、誰に……ひぃっ!」
ヤスは一瞬邪魔されたことに怒りを覚えた瞬間、俺の顔を見て恐怖に怯えた。別にヤスは髪の間から覗く俺の目付きに怯えた訳じゃない。
なぜならこいつらとは知り合いなのだ。
それも、密接に関わりのある。
「わ、若……」
ひょろっとしたおっさん……ヒデが、ガクガク膝を震わせながらそう呟く。もちろん、こいつとも知り合いだ。
「な、なぜあなたがここに……」
ヤスも全身を震わせながら聞いてくる。
「ここ、俺の通学路なんだが。たまたま歩いてたら悲鳴が聞こえてよぉ。そしたら俺のクラスメートが恐喝されててなぁ? いったいどーゆーことなのかな?」
俺は前髪をかき上げピンで留める。
このポーズは俺のガチギレの合図だと、一部が知っている。
そして、ヤスとヒデを眼で威圧し、二人の近くへと行くため、力強い一歩を踏み出す。
「「ひぃっ!」」
俺の一歩はこいつらにとって悪魔の行進に見えたのだろうか。二人は抱き合いガクガクと震える。
それを呆然と見てた白海は当然の問いをする。
「あなたは何者なの……」
少し怯えている。当然だ。
さて、俺がなぜこんな厳ついおっさんと知り合いなのか。
それは、ここ札幌には二つ裏社会を牛耳っている名家がある。
一つ目は『六道』。
現当主の六道昌義が非常に残忍で有名で逆らう者には容赦はしない。六道の傘下に下っている者も、みな気性が荒いことから広く恐れられている。
二つ目はさっきヒデが言った、『天笠』。
六道とは対称的で、現当主の天笠英隆は争いを好まず、平和に穏便、だが恐ろしい手腕で支配を広げている、が実際には、天笠英隆は戦闘狂だ。強いやつにしか喧嘩を売らないことから噂が独り歩きしている。
なぜ俺が内部に詳しいかはもう分かるだろう。
俺は母方の実家が『天笠』の直系。
つまりこの俺、狭山渚は……天笠英隆の孫である。そしてヤスとヒデは天笠の下っ端、もとい組員である。
「俺はこの馬鹿どもの知り合いだ。この馬鹿が迷惑をかけた。悪かった……おい」
とりあえず俺は怖い思いをしたであろう白海に頭を下げ謝る。
そしてヤスとヒデにも目線を送る。
「「ひっ! すみませんでしたぁ! 若様のクラスメートとは露知らず! 大変失礼致しましたぁ!」」
一字一句同じことを言い、土下座するヤスとヒデ。相変わらずコンビネーションだけはバッチリな二人だ。
そんな俺たちを困惑の目で見る白海。
いや、なぜか顔を朱くして俺の眼を真っ直ぐ見つめる白海。
「……かっこいい」
ボソッと呟く白海。超小声で呟かれた声に俺は気づくはずもなく、黙って頭を下げ続ける。
ハッと正気に戻ったように頭をぶんぶん振った白海は、頭を下げる俺にこう言った。
「いえ、あなたのせいではないもの。あなたが謝る必要はないわ。……それに私にも原因があるし」
怯えが収まったのか、毅然とした態度で発現する白海。相当胆が据わっているな。
「そういってもらえると嬉しいが、こいつらに指導が足りてない俺の監督不行き届きだ。こいつらはあとでたっぷりと絞っとく。あとは何があったか話してくれないか?」
「ええ、勿論。それにあなたが何者なのかも教えてくれない? ただの知り合いってわけじゃなさそうだし」
うっ、と唸る俺。
「それは秘密ということには……?」
「だめ」
「さいでっか……」
どうやらただの知り合いという言い訳を苦しいようだった。
諦めて俺は白海に話すことにしたのだった。
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